極楽ハニー 7th【ars K.N】 (ページ10)

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220.褒めて伸ばして。ページ10

顔の前でパチンと手を合わせたニノミヤがこっちを見て「ごちそーさんでした！」って、言ったと思ったら

首を傾げて、合わせた手の陰から顔をヒョコっと覗かせて微笑んだ。

この部屋にはダイニングテーブルが無いから、食事はラグに直接並んで座ってローテーブルで食べる。

だから、今ニノミヤは私の対面に居るんじゃなくって隣に居て

食事中も、ほんの少しだけ彼に触れてる自分の身体の左側が何だかトクトクと脈打ってるようだった。

なのに、よ。
しかも、よ。

食後にそんな可愛い事をされると、胸キュンどころのお話しゃありません。

彼の前には、ちゃんと平らげてくれた豚汁のお椀とさっきまでおにぎりが乗っかってたお皿。

そんなに食べる人じゃないから、別に残されても気にしないよーっって思ってたけどこうやって全部食べて貰えるとやっぱり嬉しい。

「お粗末様でした」

諸々の照れ隠しに、ペコリと会釈をして見せる。

「丁寧な返しをありがと」
「ねぇねぇ、美味しかった？」

もう、食事中から何度もニノミヤは『旨い』って言ってくれてたのに

まだ聞こうとするなんて、私って結構...

「ンフフ、欲しがり屋さんですねー」
「フフッ」
「Aって意外と褒めて欲しいタイプ？」
「褒めて伸ばして欲しいです」
「フハハ！そっかー、なるほどね」

首だけをこっちに向けてたニノミヤが「よいしょ」って、身体ごとこっちを向く。

そして、両手を広げて「おいで？」って口角を綺麗に上げた。

「...え？」
「おいで、褒めたげるから」
「え...いやぁ...」
「なーにを今更照れてんのよ、ばぁか！」
「また馬鹿って言っ...」

憎まれ口の途中だったのに

文句言ってる途中だったのに

ニノミヤは私の身体を抱き締めて、ポンポンって頭も撫でる。

「旨かったよ。ありがと、A」
「...うん」
「イイコイイコ、よく出来ました」

ポンポン、撫で続けられる頭。

「また作ってね」
「...うん」
「お陰様で、食欲は満たされました」
「うん、良かっ...え？」

甘く褒められて完全に油断してた身体に、ニノミヤの体重がズッシリと掛かって

あ！と思った時にはもう遅くて、私はマウントポジションを取られラグの上に倒された。

押し倒された...ってより、抱き倒された？
え？そんな言葉あった？

私を見下ろすニノミヤは、「ビール、飲む？」って普通に訊いて来る。

「...飲めないよ...こんな体勢で...」
「飲めるよ？しばしお待ちを」

楽しそうに、ニノミヤが上体を起こした。