極楽ハニー 7th【ars K.N】 (ページ8)

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218.秘密兵器。ページ8

あれもこれもとカゴに入れ出したニノミヤは、途中で「手...千切れる...」と顔を歪ませた。

「そりゃねぇ...ビールそれ、六本入ってるやつでしょ？液体は重いんだよ？」
「...いっつもこれだもん」
「大根や玉葱も、思ってるより重いでしょ」
「...あの秘密兵器、オレも使いたい」
「秘密兵器？」

あれ、とニノミヤが指差した先にはカート。

「フフッ、秘密兵器って」
「もう無理！おっもいんだって！」

眉を顰めたまんま、彼はヨロヨロと歩いて重いカゴをカートに乗せる。

そして、それをコロコロ押して戻って来て

「これ、すっげぇラク！最初から使えば良かったぁ、損した気分だわ」

って、やっぱり子供みたいに笑った。

会計を終えて袋に詰めてると買い物袋は三つになったけど、ニノミヤが何も言わず二つ持ってくれて

そんな小さな事も嬉しくなる。

「カズ、それビール入ってるから重いでしょ？これと交換しよ」

私が担当してる一つの袋は、お菓子しか入って無いから軽い。

さすがにあの白くて細い両腕に、どっちも重い袋を持たせるのは気が引けた。
私の方が逞しい二の腕をしてる気がする。

いや、してる。
間違い無い。

「別に良いって、持つのも車までだし。気にすんな」
「...そう？ありがと」
「ンフフ、オレもオトコですから？Aよりは力持ちだって」

さっきまでカゴを『重いー！』って言ってたくせに、って笑っちゃいそうになる。

ニノミヤは口笛を吹きながらゴキゲンで歩いて、すれ違う親子連れの子供と妙なアイコンタクトを取ったりしてる。

彼が旦那さんだったらこれが日常になるのかな...なんてホント夢見る夢子ちゃんなコトを考えてると「ねぇ、A」と歩きながらニノミヤが呟く。

「んー？」
「何かさ」
「うん、何？」

話してる途中で駐車場の車まで辿り着き「あ、ポケットにキー入ってるからちょっと開けて」って言われて両手が塞がってる彼の代わりに私が車のロックを開ける。

私が後部座席のドアを開くと、そこに三つの袋を並べニノミヤはパンパンと手を払った。

チラっと見えた掌はやっぱり赤くなってて

駄目だ、また母性がムクムク...

「あ、で...カズ。さっき何を言おうとしてたの？」

車に乗り込み、シートベルトを絞めながらさっきの話の続きを訊く。

「あー、新婚さんみたいだねって思ったの」

私が夢見る夢子だと思ってた事を何の躊躇いも無く、サラリと言ってのけるアンタは

やっぱ、小悪魔だわ...クッソー、嬉しい！悔しい！