極楽ハニー 7th【ars K.N】 (ページ30)

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240.WEDNESDAY。ページ30

また、寝れずに迎えてしまっていい加減肌のコンディションも心もボロボロだよ...って状態の水曜日。

結局また、朝からニノミヤの姿が見えなかった。

上司が言うには、月曜に彼に徹夜まで付き合わせた先生のやっと仕上がった原稿を貰ってから出社するらしい。

「A！！居るっ！？」

それは、ニノミヤがいつやって来るか分からない緊張でグッタリしてた時だった。

「え...カンナ？」
「A！大変なのっ！！」
「ちょっ...！声が大きいから！」
「あっ！...すみません、ごめんなさい」

オフィスの入口で、カンナがペコペコ頭を下げてる。

慌てて彼女に走り寄り、背中を押して廊下に出た。

「どうしたの、カンナ」
「大変なんだってば！」
「うん、だからそれは分かっ...」
「二宮くんが！」
「...え？」

カンナの口からその名前が出て来るなんて想像もしてなかった。

そのせいで、上手く頭が回らない。

「さっき、二宮くんがうちのオフィスに来てね」
「...うん」
「写真の仕上がりをチェックしてた長瀬さんを連れてっちゃったんだけど...」
「えっ！？」

連れて...った！？

「私、どうしようって焦って慌てて後を追ったの」
「え...え、それで...！？」
「多分、屋上行った」
「屋上...」

カンナが、私の腕を掴む。

「...A、もしかして長瀬さんと何かあったの？」
「カンナ...私、どうしよう...」
「二宮くん、凄い顔してたよ...？」
「カズが...」

ざわつく胸を止められなかった。

じっとして、られなかった。

「ありがとう、カンナ」

考えるより先に、私は走ってた。

どうして私はこんな高い踵の靴を履いてるのか、本気で嫌になる。

ヒールを脱ぎたくなる衝動を堪えてエレベーターの前に辿り着き、上へ向かうボタンを押す。

なかなか来なくて、連打して
やっと来たそれに乗り込んで

屋上に出ると、冷たい風が吹き抜けた。

上着なんてもちろんオフィスに置いたまんまで、ニットだけの私は自分の両腕で身体を抱き締める。

それは、寒いからと言うよりもさっきから止まらない震えを押さえる為な気もした。

その二人の姿は、探す必要も無い程で

お互い煙草を燻らしている。

ニノミヤが携帯灰皿に吸い殻を押し付け

智也にもその灰皿を差し出した時

私は、思わず壁に身を隠してしまった。

「すみません、長瀬さん。無理やり付き合わせちゃって」
「ううん、俺も吸いたかったから」

二人の声に、心臓が痛む。