極楽ハニー 7th【ars K.N】 (ページ20)

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230.INTERCEPTION。ページ20

週が明けて、いつものように私は会社に居た。

寒さが厳しくなって来たから膝に掛けてたブランケットを、ニノミヤに横取りされて
それをどーする気なんだろう？と思ってたら、頭からほっかむりみたいに被って仕事をしてる姿を見て萌えたり

私が給湯室で淹れて来たホットココアも横取りされて、「この横取り大王が」と思いつつ
眼鏡を曇らせながら幸せそうにカップに口を付けてる姿を見て萌えたり

何だか冬ってニノミヤの可愛さを倍増させちゃうよねー！なんて萌え萌えしながら、私は私の仕事をしてた。

「ねぇ、センパイ」
「ん？何？」

ニノミヤが後ろからコロコロと椅子で滑って来て、ヒョコッと顔を覗かせる。

「長瀬さんって、もしかして今うちで仕事してる？」

その口から出て来た言葉は、想像もしてなくて

「...どうして？」

表情を変えない事だけにいっぱいいっぱいで、自分の声が震えてないか怖くなった。

「何か、さっきそれっぽい人を見掛けたんだけど...本人なのかなぁ？と思って」
「そうなんだ...」
「本人だったら挨拶したいんだけど、オレ写真では見た事あるけど実際会ったコト無いからさぁ。自信無くて」
「...あれ？ニノミヤ、長瀬さんと仕事した事あるって言ってなかった？」

装丁の写真をお願いしたって言ってたと思うんだけど...

「あー、やり取りは全部メールか電話だったのよ。ほら、長瀬さん海外だったっしょ？」
「...あ、そっか」

そうだよ。
智也はニノミヤが入社して来る前にロンドンに行ったんだった...

「センパイ、何か聞いてない？」
「さぁ...私は分かんないや」
「そっか。じゃ、他の人に訊いてみるわ」

コロコロ、とまたニノミヤは自分の席に戻って行く。

やっぱり、相変わらずあんまり静かには仕事出来ないニノミヤから小さく鼻唄が聴こえてくる。

...嘘、ついちゃった...

別に隠す必要も無かったのに。

一時帰国してる内に仕事するらしいよ、って...別に何もおかしくないのに。

ニノミヤに些細な事とは言え嘘をついてしまったって事に心がモヤついた私は、気分を変える為にオフィスを出た。

そう言えばココア横取りされたな...と思って、休憩スペースの自販機にお金を入れる。

「...A？」

その時背中に掛けられた声は、つい最近も聴いた懐かしい声で

そうだよ...ニノミヤ言ってたじゃん、『さっき見掛けた』って...って、溜息を吐き出して振り返る。

「...智也...」

煙草のケースを片手に持った智也が、困ったように微笑んだ。