極楽ハニー 7th【ars K.N】 (ページ1)

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211.仕事の顔。ページ1

大野さんを、ギャラリーまで案内する。

やっぱり西日が眩しくて手で目の上に庇を作ると、大野さんも眩しそうに目を細めてた。

「あー...まっぶしいねぇ」
「フフッ、そうですね。夕方ですもん」
「おれ、あんまりこの時間に外歩かないかも...」
「そうなんですか？夜型？」

仕事柄、時間に縛られては無さそうだけど...

「んーん、そんなコト無いよ？釣り行く時はめっちゃ早起きだしねぇ」
「釣り、お好きなんですか？」
「三度の飯より！」
「あ、確かに日焼けされてますね」

もうすぐ冬なのに、まだコンガリと焼けてる肌の大野さんが「釣りがあるから、仕事も頑張れるんだ」って笑った。

「自分へのご褒美ですね？分かります」
「あ、センパイさんもあるの？自分へのご褒美」
「私の場合は、甘い物とか欲しかった洋服...とか、そんなモンですけどね」
「え？なぁんだ...」

私の答えに大野さんはつまらなそうな声を出す。

「ご褒美はニノかと思ったのに」
「...はっ！？」
「頑張ったから、ニノに甘えさせて貰うとかぁ...あ、美味しい物食べさせて貰うーとか！」
「あー...」

頑張らなくっても甘えさせてくれるし、美味しい物も食べさせてくれる...なんて私が勝手に言っちゃったらニノミヤが恥ずかしいコトになるんだろうなぁ...

「...って思ったけど、ニノなら何もしなくっても甘やかしてくれるか！」
「えぇっ！？」
「ラッブラブだもんねぇ！」
「あ...アハハー...」

わざとかな、わざとなのかな。

わざと私をからかってるのかな、分かんないなこの人。

そんな器用そうにも意地悪そうにも見えないから...天然...でしょうか。

「...あ、大野さん。ここですよ」
「おー、ここなんだぁ」

大野さんから預かってた地図を見ながら辿り着いた、まだ新しいギャラリー。

二人で中に入ると、その日は写真の個展が行われてる。

レセプションに大野さんが何かを伝えて暫くすると、奥から関係者らしき人が出て来て少し構えてしまった。

「センパイさん。この人はおれの事知ってるから大丈夫だよ。今日ここを見に来るって先に連絡だけはしてたの」
「あ、そうだったんですか」

関係者の方も加わり三人でギャラリー内を歩いてると、さっきまでちょっとふわふわしてて「大丈夫かな...」と思ってた大野さんの顔付が、少し変わる。

「この壁にはあの絵が良いかなぁ...」

両腕をゆるりと上げ間隔を測りながら、空間を見詰める横顔は

仕事をする、男のそれだった。