極楽ハニー 5th【ars K.N】 (ページ8)

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148.キャンセル。ページ8

良いな、首輪

って、何それ！
良くない！首輪、良くない！

だって、それ首輪単品じゃないよね！？
確実にチェーンとか繋がっちゃってるよね！？

スタスタと図書室を歩き、出口に向かうニノミヤについて歩きながら

何と無く自分の首を掌で撫でてしまう。

扉の前で振り返ったニノミヤは、私が撫でてた首筋にキスをして

「首輪プレイって良くない？」

って、愉しそうに笑った。

「よっ...良くないっ！全然良くないっ！」
「えー...ダメ？」

クッソー...可愛さを武器にするな！
上目遣い多用するな！

「...ダメッ！ダメダメッ！」
「ケーチ」

ククッて笑ったニノミヤが、扉を開けて廊下に出た。

廊下に出ると一気に現実に戻る。

ニノミヤの顔も、一瞬で変わる。

手櫛で髪をサッと直し、シャツの襟を整えながら歩く後ろ姿にさっきまでとは違う胸キュンに襲われた。

あー...いつの間にこんなにもハマっちゃったんだろう...。

「あ、センパイ」
「ん？何？」
「今日、やっぱメシ行くのやめよ」
「...え...？」

ニノミヤは、チラッと私を見て「キャンセルするわ、朝の約束」って呟いた。

「...何で？」

...楽しみにしてたのに

夕飯一緒に行けるから、仕事も頑張ろう！って思ったのに。

「だって、店でメシ食ってる時間が勿体ねぇもん」
「ニノミヤ...？」
「センパイをお持ち帰りしたいの、今日は」
「お持ちか...っ！？」

メシ食いに行ったらそんだけでバイバイになっちゃうっしょ？って、少年みたいな笑顔を見せる。

確かに週末じゃないから、ご飯食べたら帰るつもりだったけど...

「安心してよ、首輪なんて着けねぇから」

ニノミヤが周りを見回してからヒソヒソ、と小さな声で囁いた。

「は！？」
「ってか、んなモン持ってねぇわ！」

ケラケラ笑って私の背中をパンッと叩き、ニノミヤは前から歩いて来た同僚に軽く手を挙げて挨拶してる。

よくそんな普通の顔が出来るな...って思うけど

きっと私も、そこそこ普通の顔が出来てる気もする。

慣れって怖い。

「あ、オレ宣伝部寄らなきゃいけねぇんだった...」
「そう。うん、行ってらっしゃい」
「ごめんな、先戻ってて」

そう言って、私にも軽く手を挙げて歩いてった。

猫背で

ちょっとダルそうで

首をコキコキと鳴らして

やっぱり途中で女の子に声を掛けられてるニノミヤ。

「...クソ生意気」

でも、好きなんだよなー。

何でだろう。

「何でなんだろね」

独り言呟いて、綻ぶ口元を

拳を作って、隠した。