極楽ハニー 5th【ars K.N】 (ページ32)

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172.誰の仕事。ページ32

「キサキに、言われたのってさ。A的には辛いコト？」
「...うん...モテる彼氏って大変だなと思った...」

こんなコト言ったら、藤堂さんがニノミヤの事を好きだって言ってるのバレバレになっちゃうなと思ったけど...

でも、私も不安で、本当はニノミヤとデートなんかさせたくなくって、ヤキモチでモヤモヤしてて

ズルイけど、やな女だなって思うけど、ホントそんな自分がイヤになるけど...けど、だけど、やっぱり不安で仕方が無いんだ。

「オレはAだけのモンだよ？」
「...はっ！？突然、何っ！？」
「不安そうな顔してるから」

全部、お見通しだ。

ニノミヤには、やっぱり隠し事なんか出来ない。

「何かあったらオレにすぐ言えって、言ったのに」
「...ごめんなさい...」
「頼って良いんだからって、言ったのに」
「...そ...だよね...」
「...って、無理だよな。Aがこーゆーコト言えるよーなヒトじゃないってオレが一番分かってたはずなのに」

頬に触れてた掌が、頭にポンと乗る。

「いつから我慢してた？悩んでた？」
「......初めて藤堂さんの自宅に行った時から...」
「うっわー...かなり前じゃん」

ニノミヤはチッ、と小さく舌打ちをして乗せてた掌で私の頭をクシャクシャと撫でた。

「ごめんな、オレが気付いてやんなきゃダメだったな」
「...ううん」
「あー...マジでゴメン...」

グイっと手首を引っ張られて、気付いたら私はニノミヤの胸の中に居た。

それだけで、もう、全部大丈夫な気がしてしまう。

「明日...オレ行って来るけど、仕事だから」
「ん...」
「オレの仕事だかんね？Aの仕事じゃねぇから」
「え...？」
「ンフフ、だって自分の彼氏をレンタルするのが仕事っておかしいだろ」

笑うニノミヤの柔らかい髪が、頬に触れる。

「元担当作家に指名されたから、ご機嫌伺いに行って来る仕事ってだけだから」
「...うん」
「ホント...頼んなくて、ごめんね」
「...ううん、そんなコト...」

ポンと背中を軽く叩いて、ニノミヤの身体が私から離れた。

頼りないなんて、思ってるワケ無いよ。

いつだって自信満々でちょっと上から目線なニノミヤは、その態度以上に頼りになる人なんだから。

「ちょっと、オレ...シャワー浴びて来るわ」
「え...？うん、行ってらっしゃい」
「うん...行ってくる。...あー...ハァ...」

小声で溜息交じりに何か唸りながらフラリとリビングから出て行ったニノミヤを、私は何も言えずに見送った。