極楽ハニー 5th【ars K.N】 (ページ26)

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166.LEADEN。ページ26

「...そんな、まさか」

ニノミヤとの関係を隠してる私に言える答えなんて、これしか無くって

軽く首を振って、微笑むしか出来なかった。

「良かった！」

ニッコリ笑った藤堂さんが、クルっと机の方に身体を向け直す。

「...今度こそ、ちゃんと想いに応えて貰わなくちゃ...」

彼女がポツリと、まるで独り言のように零した声が

いつもの涼やかなそれとは温度が違って、妙にシクっと胸に突き刺さった。

今日は直帰で良いと上司に言われてたけど、この重いココロのまんまで一人の家に帰るのがしんどくて

私は一旦、社に戻った。

「あれ？センパイ、直帰じゃなかった？」
「あ...ニノミヤ...」

どうやらニノミヤは今から作家さんの所に行くらしく、腕にジャケットを引っ掛けて玄関ロビーを歩いて来た。

「うん、そうだったんだけど...」
「ん？忘れモンか何か？」
「えっと...あ、あの、癖？うん、癖。癖で戻って来ちゃった」
「フハハッ！マヌケだな！オレならソッコーで家帰るわ」

ニノミヤの笑顔に、安心して

同時に、シクシクと痛むココロ。

「ま、オレはセンパイの顔が見れて嬉しいけどね？」
「はっ...？もう...やめてよ、そーゆーの...」
「センパイは嬉しくないの？オレに会えちゃってさ」
「...知らない」

嬉しいに決まってる。

誰にでも愛されるニノミヤが、私だけに見せる笑顔があるのを知ってる私は今世紀で一番の幸せ者だ。

だけど...

「センパイ、もう今から帰る？」
「うん、そうだね、帰ろうかな。別に会社に用があった訳でも無いし...」
「じゃ、送ってやるよ」

チャラっと顔の前に出される車のキー。

「電車で行こうと思ってたけど、面倒だし車で行くわ。ついでに家まで送ったげる」
「え...」
「ちょっと遠回りがしたいなー、なんつって」
「...遠回り？」
「先生んちとセンパイんち、真逆だもん」

クスクス笑いながら玄関を出て行くニノミヤについて、一緒に会社を出る。

「真逆って...それじゃあニノミヤの迷惑になるでしょ？」
「はぁ？迷惑な訳無いでしょ。オレがちょっとでも一緒に居たいだけ。ってかねー、センパイにもし迷惑かけられても、オレそれが迷惑だって気付かねぇよきっと」

いつだって、望んでる以上の言葉をくれる。

いつだって、優しさとはちょっと違う角度でココロに触れて来る。

いつだって、アナタは生意気な態度で私に寄り添ってくれる。

ねぇ...私どうしたら、良い？

フワフワと風に揺れるニノミヤの髪を眺めて、唇を噛んだ。