極楽ハニー 5th【ars K.N】 (ページ3)

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143.降ろされる。ページ3

ニノミヤの隣には、今日の勝者の女の子が居て

私の事を、クリンクリンの可愛い目でジッと見てる。

「...ニノミヤ...」

肩に乗せられたまんまの手に、身体は冷えたはずなのにそこだけが熱くなって来る。

「トーマ、今日はこっちで仕事？」
「あっ...あぁ。うん。一人で昼飯行くの淋しかったから、Aさんに付き合って貰ったんだよ」
「ふーん」

私の事は全然見ずに、生田さんと話す横顔は温度を感じない。

付き合う前から、たまに感じてた温度を感じないニノミヤの目だ。

「あ、ちょっと仕事の話あるから先に戻ってて良いよ？」
「あの...二宮さん」
「ラーメンより、本当はパスタとか食いたかったろ？ごめんな、合わせてやれなくて。オレ、優しくないからさ」

隣に居る女の子にニノミヤがその言葉とは逆の優しい声でそう声を掛けると
彼女はちょっと悲しそうな顔をしてペコリと頭を下げてその場を離れた。

彼女の後ろ姿が見えなくなったら、ニノミヤはまた生田さんを見る。

「お前...何してくれてんのよ...」
「いやっ、何もしてないよ！本当に！」
「昼飯、誘ってんじゃん。人のオンナ、口説いてんじゃねぇぞ」
「飯食ってただけ！口説いて無いってば！信じろよ！」

もー...って、生田さんが眉を下げる。

「俺、ニノと張り合う気はもう無いから」

フゥって一つ息を吐いて、穏やかに微笑む。

「俺、ニノとAさん、二人とも大切な友達だと思ってんだから...邪魔なんてする気、更々無いよ」
「トーマ、それ信じて良いの？」
「嘘だったら針千本飲むよ」
「嘘だったら末代まで、何代先の子孫までも恨んでやるかんな？」

あぁ...これ、冗談に聞こえるけどきっと本気のやつだ...って思う台詞を吐いて

ニノミヤがやっと、ニヤッと笑った。

三人でロビーを抜けて、エレベーターに乗り込み生田さんは打ち合わせの為に会議室のフロアで降りる。

「じゃ、俺はここで」
「おう。良いモン書けよー？うちの会社に利益を出せよー？」
「ハハッ！努力はします」

扉が閉まり、爽やかな笑顔で手を振る生田さんの姿が見えなくなる。

エレベーターの箱の中に、ニノミヤと二人残される。

「センパイ」
「はい...」
「降りるよ」
「えっ！？」

オフィスがあるのとは違うフロアで、ニノミヤは私の腕を引っ張ってエレベーターから降ろし

廊下をスタスタ歩き

「ちょっと、お話しましょうか」

そう言う彼に、背中を軽くトンッと押されて入ったのは

相変わらず誰も居ない、図書室だった。