極楽ハニー 4th【ars K.N】 (ページ7)

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112.鼓動。ページ7

空のグラスを私の手からソっと取ると、それをローテーブルに置いて何も言わずに私の顔をジっと見る。

透き通る茶色い目から思わず目を逸らし、ソファの上で体育座りしてそのひざに顔を埋めてしまう。

「センパイ？」
「......」
「こっち見てよ」
「...やだ...」

フッ、と小さく笑った声が聴こえたけどニノミヤを見れない。

ニノミヤもソファの上に脚を上げて、身体を私に向けて胡坐を組んだ。

「こっち、見ろって」
「...やだって...」
「強情だな」

グイっと腕を引っ張られて、私の身体はポスンとニノミヤの胸の中に背中から納まってしまう。

「つーかまーえた」
「ちょ...っと...」

後ろからキュっと抱き締められて、胸もキュっとなる。

回された腕に手を添えると、ニノミヤの腕の力が強くなった。

「...ヤバ...」
「え...？」
「...ちょっと...いてぇんだけど、心臓」
「...あ...」

密着した背中に、トクトクとニノミヤの鼓動が伝わって来る。

「ニノミヤ、ドキドキしてるの？」

ちょっと、からかうように言ってみる。

「...うん...」

からかったつもりだったのに、私がヤラれた気がする！！

何なの！？
可愛い...何なの！？

私の肩に顔を埋めちゃってるから、頬にニノミヤの髪がフワフワと当たってる。

その頭を、ポフンと撫でると

ピクッ、と彼の肩が跳ねて

ゆっくり、顔を上げた。

少し潤んでるような目が、蕩けるように私を見詰める。

鼻と鼻が、軽く触れ合って

ニノミヤが口角を緩く上げて、目を閉じ、鼻をスリスリと擦り合わせて来た。

その、小さな子犬みたいな仕草に、全身が熱くなって

彼の腕に添えてた手にギュウっと力が入ってしまう。

「ンフフ。センパイ、痛いよ。手」
「あ...ごめん...」
「仕返し」
「いっ...」

軽く首筋に歯を立てられて、チクっと痛みが走った。

でも、その痛みに被せるようにそこにキスを落とされ

私の身体を抱き締めてた腕の片方が、頭を抱えるように髪を撫で始める。

後ろから抱き締められてるせいで、ニノミヤの顔が見えない。

それがもどかしい。

「...ニノミヤ...ねぇ...」
「ん？」

ペロリ、と舐め上げられる首筋。

「んっ...」
「ンフフ、イイ声...」

真っ白な部屋に、ニノミヤが這わす舌の水音が響く。

凭れたニノミヤの胸

彼の心臓がトクトクしてるのが私の背中に、まだ伝わって来る。

でもきっと、私を抱いてるニノミヤの腕にも

私の鼓動が伝わってると、思うんだ。