極楽ハニー 4th【ars K.N】 (ページ36)

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140.意地悪と素直と爆弾。ページ36

朝から、少し緊張していた。

あんな事されて、私はどんな態度をとるのが正解なのか眠らず考えたけど

眠らずってゆーか、眠れず考えたけど分からない。

だけど、肝心のニノミヤはフレックス出勤のようで午前中は顔を見せず

私は徐々に緊張感から解放され始めてた。

久々にカンナと食堂で昼食をとって『で、彼のアレやコレやは癖になるの？』って下世話な事をニヤニヤ訊かれて

まぁそれなりに大人の対応で、私もニヤニヤ応えて

気も抜けつつ満腹でオフィスに戻ってたら

「あ、センパイ」

ちょうど今来た、って雰囲気のニノミヤと廊下でバッタリ鉢合わせてしまった。

「ニッ...！」
「ニ？」
「...ニノミヤ...」
「うん。フフッ、ニノミヤですよ？おはよ。あ、もう『こんにちはの時間』か」
「...こんにちは...」

あちぃあちぃ、って言ってる割りにどこか涼し気な横顔を盗み見る。

お礼...

そうだよ、お礼だよ

昨日の、お礼しなくちゃ。

「あっ...の、ニノミヤ...」
「ん？」
「...ありがと...」
「ンフフ、何が？」

彼がチラッと視線だけをこっちによこして、口角を上げる。

「ううん、何でも無いけど...」
「何よ、それ」

ククッて、ニノミヤが笑う。

「...言いたくなっただけ」
「そ。じゃ、オレからもありがと」
「...え？」
「言いたくなっただけー」

意地悪なニノミヤに、私は素直になれなくて

だけど素直になれない私に、ニノミヤは少し想像とは違ったコトを返してくれる。

だから、私も少しは素直になりたい。

「ねぇニノミヤ...」
「ん？なぁによ、どした？」
「私も、だから...えっと...私もね...」

社員が行き交う廊下では、やっぱり上手く話せなくて

「やっぱ、良いや」って曖昧に笑って、誤魔化す。

「センパイも寂しくない？」
「...え...」
「センパイもオレが居れば...」

寂しくないって思ってくれる？って、小さな声で囁く。

顔が熱くなって、コクンと頷くだけで精一杯。

「もー...どこで爆弾落としてくれてんのよ」
「えっ！？」
「こんなトコじゃ何もできねぇだろうが！」
「はい？」

オフィスの前まで辿り着き、ヒソヒソ怒鳴るニノミヤの顔を見ると

「すっげぇ濃いチューしたくなったんですけど。ってか、今すぐ押し倒したいんですけど」

耳元で囁き、フハッ！と笑って、私の肩をポンッと叩きオフィスに足を踏み入れるニノミヤの背中に抱き着きたい気持ちをグッと押さえて

私もその背中をパチンと叩き

ニノミヤを追いかけるように、オフィスに入った。