極楽ハニー 4th【ars K.N】 (ページ35)

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139.ALICE。ページ35

「ニノって、器用なんだか不器用なんだかよく分からないですよね」
「え？」
「昔からそーなんですけど、どっか冷めた振りして格好付けちゃって...ホントは真っ直ぐで熱いくせに」

大野さんも、前にそんな事を言ってたな...なんて思う。

「あんな奴ですけど、多分...いや、絶対に嘘はつかないし。ってゆーか嘘下手だし、意外と」
「そう...なんですか？」
「はい。だから、信じ切って大丈夫ですよ。ニノの事は」

その言葉に、胸の奥がふっ...とあったかくなって来る。

ヤバイ、泣きそう。
我慢、我慢。

「良かったら、花言葉を調べてみてください」
「花言葉？」
「それが、ニノがニコチアナを選んだ理由です」

そう言うと、松本さんはペコッと頭を下げた。

「では、失礼します。素敵な休日を」
「あっ...はい、あの...ありがとうございます」

『素敵な休日を』なんて言う花屋さん、初めて会った。
どこまでも王子様。

パタンとドアを閉めて、部屋に戻り花束を抱えたまんまPCを開く。

「ニコチアナ...花言葉...」

カタカタとキーボードを叩きながら、思う。

きっと、あのニノミヤの事だから『あなたを愛する』だとか『真実の愛』だとかの

何か、歯が浮くような花言葉が出て来るんだろうなー...なんて。

けれど、ちょっとクスッと笑いながら見てたPC画面に出て来た言葉は私の想像とは全然違って

一瞬で、私の心をギュウって握り潰したみたいで...。

『君あらば、寂しからず』

「...何よ...もう...」

何で、そんな可愛い想いを花束に込めちゃうのよ。

いつも、ツンッて偉そうで

いつも、生意気に上から目線で

いつも、余裕綽々で

なのに、どーして『君がいれば、寂しくない』なんて...

「ズルい...バカ...」

嬉しいんだか、何なんだか、上手く笑えない。

「...ん？」

花束の中にメッセージカードがある事に気付き、少し震える指で開いてみる。

『Merry Unbirthday To You！』

...アリスだ...

ー何でもない日、おめでとう！ー

不思議の国のアリスに出て来る、歌の一節。

ニノミヤにとっては、何でもない日かもしれない。

むしろ、仕事でも顔を合わせてるのに週末も一緒に居てどちらかと言えば今日は珍しく会えない日。

だけど、私にとってこんな嬉しい日って無い。

特別な日、だなんてもー乙女が口にする台詞みたいで恥ずかしいけど、そう思っちゃったんだから仕方無い。

ずっと我慢してた涙が、ポロッて零れて

でも、同時に私、笑ってた。