極楽ハニー 4th【ars K.N】 (ページ32)

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136.この世のモン。ページ32

「色はどーする？」
「潤くんに任せるー」
「いやいや、ちょっとは自分でも考えろって。ニノからの贈り物なんだからな？」
「えー...わかんねぇもん、だって...」

とにかくちょっと花を見て考えて！って、立ち上がった松本さんに手を引っ張られ

「もー...ごめん、A。ちょっと待ってて」

って面倒臭そうに言うニノミヤを見送って、私はそこにある、オシャレな白い椅子に腰掛けた。

店中に漂う花の香りに、クンクンと鼻を鳴らしてしまう。

花屋さんに来たのなんて、どれくらいぶりだろう。

綺麗な花達の向こう側で、何だかんだ楽しそうに笑ってるニノミヤと、色んな花を見せながら微笑む松本さんを見てると

私まで穏やかな気持ちになって来ると同時に、ちょっと麻痺してたけどニノミヤの見た目もかなりのもんだって事を再確認して

あの二人、マジでこの世のモンなのかしら...って割と本気で考えてしまう。

「あっ、ニノくん！いらっしゃいませー」

私がバカな事を考えてると、店の入り口から綺麗な女の人が入って来た。

「うぃーっす、久し振りだね。奥さん」
「ニノくん、相変わらず白いね」
「そこかよ。白さだったら、アナタの旦那の方がオレの上を行ってっけどな」

花を決めたらしいニノミヤが小走りに戻って来て、私の隣の椅子に座り

「あ、この子潤くんの奥さん」

って、私に紹介してくれたからペコッと会釈すると、彼女も微笑んで会釈してくれた。

「で、こっちがオレの彼女のA。あ、違う。可愛くて困っちゃうオレの彼女のA」
「はっ！？バッ...バカじゃないの！？」
「何が？」
「なっ...何って...！」

私とニノミヤのやり取りに笑ってた松本さんが、奥さんに「あ、お前...」って呟く。

「ワンピース着ろって言ってんのに。お腹、締めんなよ」
「でもまだ全然お腹出てないし」

奥さんが履いてるデニムのウェストを触りながら「大丈夫だよ？」って言っても松本さんは「だーめ！妊婦さんなんだから！」って、眉を顰めてる。

「奥さん、赤ちゃんいるんだね」

微笑ましい二人を見ながらヒソッとニノミヤに言うと

「もーすでに潤パパは過保護だかんね。産まれたらどーなるんだろ」

ってクスクス笑う。

「さて、潤くん。オレら、そろそろ行くわ」
「うん」
「明日、よろしくね！」
「お任せあれ」

じゃ。行こっか、って当たり前のように私の手を握るニノミヤに

松本さん夫婦の空気もあって、何だかとっても

幸せ、なんて思う。