極楽ハニー 4th【ars K.N】 (ページ29)

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133.ウザ可愛い。ページ29

今週末、明日の土曜しか会えないんだわ

ニノミヤが金曜の夜、ご飯を食べてたパスタ店でつまんなそうに呟いた。

「あ、そうなの？」
「んー...日曜仕事、入っちった...」
「仕事はしょーがないね。ご苦労様です」
「何か、アッサリしてんねぇ」

片手で頬杖ついて、左手でフォークをクルクル回してパスタを絡み付けながら

お行儀悪く、ニノミヤが私を見る。

「何？『私より仕事が大事なの？』とか、言われたい？」
「ンフフ、Aになら言われても良いかも」
「えー、ウソだ。言われたら、絶対にウザイよ」
「ウザいかぁ？...いや、可愛い気がする。フッ...ヤベ、想像した」

勝手に想像して、勝手にクククッて笑って

「ウザ可愛いな！」

って、よく分からない言葉を楽しそうに言いながら彼はパスタを口に入れた。

「でね、土曜なんだけどさ」
「うん？」
「付き合って欲しい場所があんの。良い？」

ほっぺをポッコリ膨らませて、ニノミヤが上目遣いをする。

...計算？

計算だよね。
この、小悪魔が。

「変な場所じゃなきゃ、何でも付き合うよ」
「変な場所ってどんな場所よ」
「色んな怪しい場所知ってそうだから、ニノミヤって」
「あー......」

あー......って何！

あー......の、後は何！

「まぁ、変な場所じゃねぇと思うよ」

向かいの席から私のたらこパスタに手を伸ばして、フォークにクルクル巻き付けながらニノミヤが話す。

「バケモンみたいな奴は居るけど」
「バケモン！？」
「あ、うま。たらこ、うま」
「バケモンって？ねぇ、何、バケモンって！」

私の質問には答えずに「たらこパスタうめぇな、日本人天才だな」ってブツブツ言ってる彼が

今度は、自分の前にあるボンゴレをクルクルとフォークに巻き付け

私の口元までそれを持って来た。

「はい、あーん」
「はっ！？...な...ちょ...ここ外！」
「A。さっき、オレの事『ニノミヤ』っつったろ」
「あ...」

会社帰りだから、ついつい流れで呼んでしまってた。

「だから罰ね！はい、あーん」
「罰...」

ニノミヤは頬杖をついたまま、ニッと微笑む。

罰にしては...

とっても甘いと思うけど？

こんな罰なら私はいつでも受けて立つけど？

「......もう...恥ずかしい...バカ宮！」

そんな風に、憎まれ口を零しながら

「何だよ、バカ宮って！フハハッ！」

ケラケラ笑うニノミヤの手から、パクッとパスタを食べた瞬間

私、すっごく幸せなんですけど？

こんな罰なら、大歓迎だとか

言えないけどね。