極楽ハニー 4th【ars K.N】 (ページ26)

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立ってるのもちょっと気怠い独特の倦怠感を纏った身体で、ニノミヤの胸にギュっと抱かれる。

さっきまでの甘い空気が微かに残る部屋で、一応来た時と同じように身なりだけは整えて

すぐにここから出られるようにはしてるけど...離れたくない。

トクトク、彼の心音が聴こえ安心して、何だか眠たくなって来る。

「...おい、立ったまま寝んなよ？」
「んー...眠たい...」
「仕事中ですけどー？」
「仕事中に手を出して来たのは誰よ」

私の言葉に、一瞬黙ったニノミヤは「こんなのハジメテ！」ってフザけた調子で言った。

「...あーあ...もう私、これからこの部屋に来ると変な汗かいちゃいそう...」
「オレは逆にワクワクしちゃう」
「もうここには近付かないようにしよっと」
「えー、近付けよー。オレが一人で居る時狙って近付けよー」

クスクスと笑いながら、ちょっと身体を離す。

「時間、ヤバイよね？」
「ん？...あ、ホントだ。ヤバイな」

私の腰を片手で抱いたまま腕時計を見たニノミヤは「時間よ止まれ！とかってできねぇかな、オレ」って呟く。

あー...できるかもね。
魔法使いだから。
何でも挑戦が大事だよ、一応やってみたらどうだろう。

「何考えてんの？A」
「えっ！？」
「すっげぇオレのコト見てたから。何？」
「...いや...別に、何も...」

彼氏を『魔法使い』だとか言ってる三十路女子はちょっと痛々しい気がして、黙ってしまう。

「なぁによ、『カズ、大好き！』とか言ってくれんのかと思ったのに」
「えっ...あー...」
「ん？」
「...うん、それはね...好き...です...けども...」

モゴモゴと口籠る私の頬をツンと指で突いたニノミヤが、ちょっと微妙な顔をしてる。

「何よ...」
「何か、Aって計算なのかなーと思って」
「は？計算？何が」
「ンフフ、天然モノはやっぱこえぇな」

ツンツン突いてた頬をムギュっと抓ったニノミヤが

「オレも好きだよ」

不意打ちのように、微笑んだ。

顔がカーッと熱くなる。

「こんなトコであんなコトしてくれるAが、オレは大好きよ」
「はぁ！？それだけ！？」
「性癖の一致は大切でしょ？」
「性癖...って...」

ニノミヤはククって笑うと、私をもう一度ギュっと抱き締めた。

「もうさ、どこが...とか無いんだわ」
「え？」
「『どこが好き？』って訊かれたら、ありがちだけど『全部』って答える、オレ」

蕩けるような柔らかい声に、涙が零れそう。

きっと、私の全部、アナタのモノになったんだ。