極楽ハニー 4th【ars K.N】 (ページ25)

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129.昔読んだお話。ページ25

会議室のあるフロアは、会議をする社員や作家さんだけが踏み入れるから

そんなに人通りが多い訳では無い。

だけど、だからって全然人が居ないって事は当然無くて時々廊下を歩く足音や、声も

もちろん聞こえて来る。

「...っ...」

両手を後ろについて、机に倒れないようにしてると

ニノミヤの手が背中に回った。

「支えといてやろうか？」
「...ぇ...」
「それとも、押し倒した方が良い？」

私が返事をする前に、ニノミヤはキスを深くして

片膝を机の上に乗せ、私に体重を掛ける。

私の身体は、簡単に後ろに倒れ机の上に寝かされた。

「...フフッ...えろ...」
「...ニノミヤ...ねぇ、やっぱり...」
「やっぱり？」
「こんなの...良くないって...」

ニノミヤの手が、スルッと服の中に滑り込む。

また部屋の外から、コツンコツンと、足音が聞こえる。

「ほら...ね？見付かったらヤバイから...」
「うん、クビかもね」
「だったら...」
「でもなぁ、止まんない」

クフフッて、こんな時でも可愛く笑うコイツは

「...変態...」
「そうだって言ったと思うけど？」
「......」
「覚悟してって、言ったでしょ？」

言われた...言われたけど...

言われたけどさ...

「...A、やだ？」
「...やだよ...」
「ホントに？」
「......」

即答しない私を、満足そうに見下ろしたニノミヤの胸ポケットから

そこに挿してた眼鏡が机にカツンと落ちた。

その眼鏡を気にする事も無く、ニノミヤは私の頭を撫でてオデコにキスをする。

唇が、コメカミに触れ

目尻に触れ

鼻の頭に触れ

頬に触れ

顎に触れる。

一番触れて欲しい唇を避けるような動きに、思わず吐息が漏れた。

「...可愛い人」

普段より低い、甘ったるい声で囁かれて

もう、どうでも良くなって来る。

良くない、良くないよ

ダメ、ダメだって

その言葉は、もう声にならない。

「カズ...」
「...ん？」

ニノミヤの首に腕を回す。

「...キス、したい...」

オオカミが張り巡らせた罠に、赤ずきんは簡単に堕ちる。

「ヤッバ...たまんないんだけど...」
「んっ...」

私の望んだ通り、重ねられる唇。

『お婆さんの口は、どうしてそんなに大きいの？』

『それは、お前を食ってしまう為だよ！』

昔読んだ赤ずきんの話を思い出した。

私も食べられるんだ...って、食べられたい...って

そう想った時

ブランと下ろしてた私の脚から、履いてたパンプスが脱げて

コツン、と床に落ちた。