極楽ハニー 4th【ars K.N】 (ページ19)

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124.甘い罠。ページ19

「似顔絵描いただけで、色目なんて使ってないよ？って言ったんだけどね」
「はい...ですよね」
「だけど、一番の武器を使ったんだからそれは色目だ！って。もぉ、メチャクチャだよねぇ」

楽しそうに笑い出した大野さんは「で、何故か罰だってコーヒーカップ洗わされた」って、私を見た。

そう言えばあの時ニノミヤ、そんな事言ってた。
『罰なんだから』って。

第四会議室の前に着き、私が扉を開くと大野さんが顔を覗き込んで笑った。

「ニノはさ、ちょっと引くくらいだよ」
「え？」
「引くくらい、恋するニノは甘ったるくて独占欲強いの。ドン引き！フフッ」
「...ドン引き...」
「だからね、『私なんか』なんて言っちゃダメだよ？」

大野さんの緩く目尻の下がった目が、優しく微笑む。

「ニノは、確かによりどりみどりだけどね？その中から、センパイさんを選んだんだ。凄いねぇ！」
「...大野さん...」
「自信、持って大丈夫。ニノは、引くくらいセンパイさんに惚れてるよ」

...って、おれが言ったのは内緒ね！って、大野さんは慌てて口の前で人差し指を立てた。

「こんな事言ったのバレたら殺される！」
「そんな大袈裟な...」

「おい、てめぇ。何、人の彼女と顔寄せ合ってんだ、あぁ？」

私と大野さんの真後ろから声がして、二人でビクッと肩をすくめる。

「...二ノッ！寄せ合ってないよぉ、喋ってただけ！」
「もう、おっさん危険！さっさと入れ！」
「うわっ！」

ニノミヤが大野さんの背中をドンッと会議室に押し込んだ。

そして、大野さんが押し込まれたその扉をバタン！と閉めると私をチラッと横目で見る。

「ありがと、センパイ。大野さんの相手してくれて」
「ううん」
「...何の話してたの...？大野さんと、さ」
「え？」

ちょっと気まずそうに俯いてボソッと言ったニノミヤが可愛くて

大野さんから聞いたさっきの話の事もあって、またニヤニヤが込み上げて来る。

「ニノミヤはモテるね、って話」
「何だよ、それ」
「何だろうね」
「何だよ」

フフッ、と笑うとニノミヤもククッ、と笑う。

「あんまり他のオトコに可愛い顔見せんなよ？」
「えっ！？」
「さっきセンパイ、すげぇ可愛い顔して大野さん見てんだもん。ダメ、あれ」

ペチン、と私の頭を軽く叩いたニノミヤが口角を上げる。

「Aのあーゆー顔は、オレだけが見てたいの」

そう言うと、キョロッと周りを見渡してからチュッと頬にキス。

蕩けそう。

ニノミヤの甘い罠に、蕩けそう。