極楽ハニー 3rd【ars K.N】 (ページ22)

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92.オンナじゃない。ページ22

知らなかった。

見てるだけの時は、その身体は女の子みたいに華奢で「まさか私より細いんじゃないの？」なんて思ってたのに

私を抱き締めてる腕は力強いし、胸板もちゃんと男のそれだった。

「...男だ...」
「え？何が？」
「...ニノミヤが...」
「オンナに見えてた？」

クスクス笑うニノミヤの振動が、伝わって来る。

片手でふわふわと後頭部を撫でられて、自分がどっぷり女の子扱いされてる気がして恥ずかしい。

「オレはオトコですよ？」
「分かってるけど！分かってるけど...何かね」
「確認してみる？」
「はっ！？」

ニノミヤが真顔で私の目を見て、堪えきれなくなったのかプッと吹き出して大笑いする。

「ま、確認は今度ってコトでね。帰ろう帰ろう。ちょ、オレ鞄取って来るわ。ロビーで待ってて」

スルリと私の身体から離れて図書室を出て行こうとする彼の後姿を見ると

何となく、さっきまで抱き締められてたのも夢だったのかな...と思う程、現実味が無くなって来た。

「センパイ？どしたの？」

動かない私を振り返り、ニノミヤはもう一度私の前まで歩いて来る。

「ん？もっと？」
「えっ！？」
「しょーがないなぁ、ちょっとだけだかんな？」
「えっ...え...？」

ニノミヤがわざとらしく大きく腕を広げて「さぁ、飛び込んで来い！」なんて言って顎をツンと上げて笑う。

「ちが...そーゆーんじゃなくって...」
「素直じゃねぇなぁ」

フゥって小さく息を吐き出した彼が、広げてた腕で私を包み込んだ。

「もー...こんなんしてたらいつまでも帰りたくなくなっちゃうでしょ？だからオレは断腸の想いでセンパイから離れたのに」

やっぱ離れるのイヤになっちゃうじゃん、って笑うその声は柔らかくって、あぁそっか、コイツこんな声も出るんだ...って思うとキュンとなる。

「じゃ、ここの扉までね。こうやって歩こ」
「え？」

私の掌を、ニノミヤの掌がギュって握った。

その手を引っ張るように私を図書室の扉の前まで連れてって、そこで私の頬に軽く口付けてから手を離し扉を開く。

「ロビーで待ってて」
「...うん」

軽く走って行くニノミヤの背中を見ても、もう夢だったのかななんて思わなかったのは

キスされた頬がまだ少し、暖かかったから。

私は、湧き上がって来てしまうニヤニヤをどうにか押さえようと必死で格闘しながら

でも結局ニヤニヤしちゃうから、口元を掌で隠してロビーに向かった。