極楽ハニー 3rd【ars K.N】 (ページ13)

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83.今日は何の日。ページ13

食事を終えカンナと別れて、私はオフィスに戻る前に一服して行こうと喫煙室に向かった。

喫煙室のガラスの扉に手を掛けて中を覗くと

上司と談笑しながら、煙草を吸うニノミヤ。

一瞬、入るのを躊躇ったけど私は小さく息を吐いて扉を開ける。

「お疲れ様です」

ペコッと頭を下げて中に入ると、上司が「お、お疲れ！」と軽く手を挙げた。

「お疲れ様。センパイ、何食って来たの？」
「...ハンバーグ」
「へぇ！オレ、鰻奢って貰っちゃったー」

一緒に居る上司と外に食べに行ってたらしいニノミヤは自慢気。

涼しげなサマーニットのベストに白いシャツの袖を肘まで捲っているニノミヤは無駄に男前で、思わず目を逸らした。

暫らくすると上司が先に喫煙室を出て行きニノミヤと二人、残される。

「ねぇ、センパイ」
「何？」
「今日って何の日か知ってる？」
「...今日？6月17日だっけ？」

調べても良いよ、って煙草を灰皿に押し付けて「分かんなかったらペナルティね」って笑う。

私はスマホを出して検索してみた。

「おまわりさんの日、らしいよ」
「ンフフ、初めて聞いた」
「あ！鈴木福くんの誕生日だって！」
「福くんかー、惜しいな！」

ケラケラ笑ったニノミヤが、壁に凭れてた私の隣に並んだ。

肩と肩が、触れ合う。

「正解は、オレの誕生日」

綺麗な茶色の目が、キュッと細くなった。

「そうなんだ！へぇ、おめでとう！」
「ありがと。けど、当てられなかったからペナルティね」

そう言うと、ニノミヤが左手でデコピンする構えをする。

「えぇー...」
「文句言わずに、ほら、目閉じてよ」

ほんとコイツ、ドSだな...と思いながら私は前髪を上げておでこを出してギュッと目を瞑った。

だけど

いつまでもおでこにピチッとした痛みは来なくて

代わりに、ふわりと口元に柔らかい温もり。

固く瞑ってた目を開くと、眼鏡を取ったニノミヤの閉じた瞼がそこにあって

ニノミヤの唇と重なってた私の唇を、彼の唇が軽く挟んだ。

えっ！？と思ったのと、その唇がチュッと小さな音を立てて離れたのが同時で

私は声を出す事も出来ず、至近距離にあるニノミヤの目を見るしか出来なくて

「これを機に、覚えて下さいね？オレの誕生日」

眼鏡を掛け直しながら緩く微笑んだニノミヤが、喫煙室から出て行くのをボンヤリと眺めた。

「...何...？今の...」

私は自分の唇を指でなぞって

「...何なの...！？」

腰が抜けたように、その場にしゃがみ込んだ。