極楽ハニー 10th【ars K.N】 (ページ6)

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321.マツリノアト。ページ6

盛り上がった二次会も終わり、櫻井さん夫婦にもう一度お祝いの言葉を別れを告げて会場を出た。

私達は歩いて帰れるから、駅まで彼らを送ってからニノミヤのマンションへと歩き出す。

「コンビニ寄ろっかー」
「うん、そうしよ」

初めてニノミヤんちに泊まった日の事を思い出す。

コンビニで色々と買ったなぁ...。
ってか、その前に下着とか買ってたし。

今なら笑い話にできるけど、あの時は何かもう死にそうだったな...私...色々と。
もう随分、昔の事のような気すらする。

「あ...やっぱやめよ」
「え？何で？」

コンビニの前で、彼が立ち止まって私の手を握った。

「オレ、行きたいトコがある」
「え？」
「うん。今、急に行きたくなったの」
「今から？」

もう、結構時間は遅い。

「明日休みだし、良いでしょ？」
「うーん...良いけど。どこ？」
「まぁ、それは着いてからのお楽しみで」

そう言うと、ニノミヤは私の手を引きながらさっき皆と別れた駅に戻り始める。

「ホントは車で行きたいんだけどさぁ」
「うん」
「酒、飲んじゃったからさぁ」
「うん。フフッ、いっぱい飲んでたね」

二次会の間、彼らは楽しそうに何度もみんなで乾杯してた。

大野さんに「翔くん、幸せだねぇ」って頭を撫でられた櫻井さんが、子供みたいに泣いちゃったのも

それを見たお嫁さんもつられて号泣しちゃったのも、何だか可愛かったなぁ。

駅に着いて、改札をくぐりホームで電車を待つ。
ニノミヤと電車に乗る事自体が珍しいから、なんだかワクワクしてしまう。

土曜の夜。

電車の中はそんなに混んでもなくて、二人で頭を寄せ合うようにして今日ニノミヤが撮った写メを見た。

暫く電車に揺られ、ある駅で停車した時

「A、ここで降りるよ」
「うん...ここ、どこ？」
「良いから、良いから」

またニノミヤに手を引かれて歩き出す。

「ここからはちょっと贅沢ね」
「贅沢？」
「ヘイ！タクシー！」

彼はピシッと手を挙げて、駅前に停まってるタクシーに走り寄った。

後部座席のドアが開き、「どーぞ、乗って？」って促されて乗車する。

タクシー独特の匂い。

車窓を流れる、知らない景色。

ここはどこなんだろう...と思いながら、その景色を眺めてると

シートについてた手に、ニノミヤの手が重なった。

ニノミヤを見ると、彼も反対側の窓から流れる景色を眺めてる。

少し、斜め後ろからに見える横顔。

街の明かりが、暗い車内に居る彼の柔らかそうな髪を柔らかく照らした。