極楽ハニー 10th【ars K.N】 (ページ13)

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328.極楽。ページ13

しゃがみこんだ私の前に、ニノミヤもしゃがんで

「確固たる、永遠の愛」

優しい声で、囁いた。

「...ダイヤ...の...」
「うん。石言葉」
「...っ...」
「これあげたの、プロポーズ、のつもりだったんだけどね。気付いて貰えなかったから、一度目は玉砕」
「...分からないよ...そんなの...」
「にっぶいなー」

クフッ、って笑ったニノミヤが「んで、二度目ね？」って指をピースにする。

「翔ちゃんの結婚式の帰り。Aが同じ靴履いてるの見て、今日こそ決めよう！って思ったんだけど...また気付いて貰えなかったし」
「...分かんないってば...」
「でさ、三度目。さっき、『離れないで』って言ったけどあんまピンと来てなさそうだったから『あぁ、この子にはストレートに言わなきゃダメなんだな』って思ったの」
「......」
「だからさ」

ピースしてた指をキュっと畳んで一旦グーにした掌を、ゆっくりまた開くと

私の涙を、そっと拭って

「結婚しようよ。結婚、して下さい」

少し

少しだけ、自信無さそうに

だけど、やっぱり

どこか生意気な表情で

「ねぇ、返事聞かせて？」

小首を傾げる。

「......お願いしま...っ...」

私が全部言い切る前に、ニノミヤが私の身体を痛い位に抱き締めた。

「...良かったぁ...」
「カズ...」
「マジ、緊張したー...」
「ウソだ...」
「三度目だっつってんでしょ！三度もプロポーズのヒヤヒヤ経験してんの！その度に緊張してんの！」

分かんないってば！
分かりにくいってば！

普段から胸焼けするような言葉を普通に言っちゃう人だから、あぁ、今日も凄いな...って、嬉しいな...って、それ位にしか思えなかったってば！

「オレね、Aを遺して先に死ぬのもやだし、Aを送り出すのもやなの」
「え...？」
「でも同時に死ぬなんて、まぁ無理な話じゃん？自分で命を絶つと地獄行きだってゆーし。極楽行く予定なのに」
「...うん...え？」

何の話何だろう...これ。

抱き締められたまま、ニノミヤの話を聞く。

「だけどオトコの方が寿命短いから、多分オレが先だよね」
「......」
「オレ、ちゃんとAが来るの待ってるからさ。上で」
「上...」
「だから、オレが死んだ後に熟年恋愛なんかして他のジジィの墓に入ったりすんなよ！？」
「え、何それ！」
「待ち惚けだぞ！？そんな事されたらオレ極楽行く前に、地獄見るわ！」

もう、何の話！？って思うけど

そんなトコまで、好きで好きで、ちょっと怖い。