極楽ハニー【ars K.N】 (ページ6)

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6.ナマイキ。ページ6

私の心の声が漏れたと同時に、エレベーターの扉が開いた。

「センパイ、会場ってこの階でしょ？」
「...あ、そうだ」

ニノミヤに言われて慌てて降りる。

「あー、空飛ぶ絨毯でも良いなぁ」
「は？何の話？」
「さっきの陸空両用車の話」

絨毯の敷かれた廊下を、私は少し早足なのにニノミヤは相変わらずノンビリと歩く。

「日本の渋滞緩和には、もう空しか無いって思ってんだけど」
「もうどーでも良いから、その話...」

パーティーが始まっちゃう！って焦ってる私とは対極に、呑気に私のちょっと後ろを歩いてるニノミヤが「ねぇ、センパイ」と声を掛けて来た。

もう渋滞緩和の話なんて、いらん！
空飛ぶ絨毯？あぁ、似合う似合う、アンタには似合うと思うよ。
アラビアンナイトの王子様みたいで素敵なんじゃない？
すっごい日本人的なお顔立ちですけどね。

今度は辛うじて漏れ出さなかった心の声を飲み込みながら歩きながら振り返ると、ニノミヤはヒョコヒョコと早足になって私の隣に並んだ。

「オンナノコはさ、褒められたら『ありがとう』って言う方が可愛いよ？」

一瞬、ニノミヤが何言ってんのか分からなくって立ち止まってポカンとしてしまう。

「オレ、別におかしくねぇし」

ククって笑って、私の全身を目線だけで上から下まで見て「お世辞も嫌いだから言わないし」って最後に目をジっと見られる。

「綺麗って言ってんだから、素直に受け取りなよ」

さっきまで笑ってたくせに、急に真顔になったニノミヤに動揺して

コイツこんなに茶色い目だったの...？って、全然関係無いコト考えてたら

「あ、ホントに時間ヤベェ！」って、腕時計を見たニノミヤが走り出した。

つられて私も走ったけど、いつもより高いピンヒールのせいで思ったように走れない。

「ちょっと、センパイ！早く！時間厳守だってば！」

先に受付に辿り着いたニノミヤが振り返って、私を呼ぶ。

...お前が言うな！！！！

「すいませんねぇ、女性は支度に時間が掛かるんですよねぇ」

私が受付に辿り着いた時、ニノミヤは何とも人懐っこい笑顔で受け付けの男性に話していた。

「アンタねぇ...」
「センパイ、お疲れ。あ、ボクら有明書房の二宮と...」

私にチラっと視線をよこして、彼は受付を済ませる。

「行くよー、センパイ」

薄く笑いながら会場に入って行ったニノミヤの背中に

...クソ生意気

って、口パクで悪口をぶつけた。