極楽ハニー【ars K.N】 (ページ35)

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35.ADVICE。ページ35

何となく、居心地が悪くて手に持ってるペットボトルをジッと見てしまう。

「もうアラサーだからとか、自分は女だからとか、それってさ結局自分に対しての都合良い言い訳でしょ？」
「...そう...かもしれないけど...」
「そんなの気にしてたら小さく纏まっちゃうし、つまんねぇよ？」
「...分かってるけど...」

だけど、世の中はそんなに甘くないんだもん。

頑張ったらちゃんと報われるのか？って言われたら、それは微妙だ...って思うし

若い女の子の方がモテるでしょ？って言われたら、それはそうだ...って思うし

私は女だから仕事も男と同じことはさせて貰えなくって、30歳も過ぎたから恋愛にも臆病になる。

そう、言い訳してなきゃ、しんどいんだもん...

何かのせいにしたいんだもん...

「まぁさ、そんな綺麗事だけでやってける世の中だとも思ってねぇけどさぁ」
「...え？」
「何でもやってやんよ！ってゆー意気込みでやる方が良くない？仕事にしても、色恋にしても」
「色恋って...」

ヨイショ、って小さく呟いてニノミヤが立ち上がる。

「例えばオレが上司だったら、出来ないオトコより出来るオンナノコに仕事させる」
「...うん...」
「そんで、ヒトを好きになる時に年齢は一番どーでも良いコト」
「...え？」
「極端な話、母ちゃんほど年上の人を好きになっちゃったとしてもオレは自分のその気持ちを信じるわ。しょーもない世間体とかよりもな」

フフッて笑って「さぁて、仕事戻ろ」って、喫煙室のドアを開けたニノミヤの背中をついてく。

「センパイ、オレさぁ」

前を歩いてたニノミヤがクルっと体ごと振り返った。

「『我が生涯に一片の悔い無し！』っつって死ぬのが理想」
「あ、...ラオウ？だっけ？」
「そう！センパイ北斗の拳知ってんだ」
「んー...よくは知らないけど、その言葉は有名だもん」

立ち止まってるニノミヤの隣に追いつくと、「だからね、いまわの際にそう言えるようにオレは自分に言い訳せず、後悔の無い人生を送ろうと思ってんの」って片眉を上げる。

「センパイもそうやって生きた方がきっと楽しいと、ニノミヤ君は思いますよ？」

ニノミヤは『空飛ぶ絨毯に乗りたい』だとか『神様はオレに贔屓し過ぎ』だとか、いつもすっとぼけたコト言ってるけど

時々、真っ直ぐで意外と熱いんだな...ってコトを言う。

それが...何か...格好良いな...

そこが、好きだな...

...なんて。

ほらまた私、女子高生みたいな事考えてる。