極楽ハニー【ars K.N】 (ページ24)

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24.残業ロンリネス。ページ24

ニノミヤが女の子のお誘いを全部断ったクリスマス。

私はニノミヤに「御予定は～？」なんて訊く余裕も無い程の仕事に追われ、昨日のイブだって帰り際の電車の中で「今日ってイブじゃん！」って思い出した位だったし

今日だって、残業確定の仕事量。

クリスマスの甘い御予定が入ってそうな女子社員が終わらない仕事を前に泣きそうになってるのを見て「代わってあげようか？」なんてちょーっとイイヒトぶった自分を責める。

「...終電までには帰れますように...」

ブツブツ言いながら電気がほとんど消された暗いオフィスで一人、ＰＣ画面とひたすら向き合う。

けどどうせ、早く帰ったところでラブいカップルいっぱい見て「ケッ」って思うだけなんだったらこうやって仕事してる方が100万倍マシ。

...ってか、100万とかってゆー数字が出て来る所に自分のアホさを感じて、ガクンと項垂れた。

「お疲れちゃーん」

ガックリ頭を下げてた私の真後ろから聞こえた声に、ビクっとなり固まる。

「クリスマスも残業なんて、社会人！って感じだよなぁ。子供でも居たらサッサと帰りたくなんのかなぁ...」

ギッ...と椅子に座る音がして、やっと私は振り返った。

「...どしたの、ニノミヤ」
「どしたの...って、オレも仕事なんだけど」
「だって、帰って無かった？定時で...」

今日ニノミヤは終業定時にサラっと出て行った。

それを見て「結局予定あるんでしょうが！女ったらしめ！」って思ったもん。

「帰ってねぇわ。たまたまその時間に出ただけで、原稿貰いに行ってたの！ホンット、ずーっと締切守ってくれないオッサンでさぁ...やっと完成したのがクリスマスかよ！って」

空気読めや！ってブウ垂れたニノミヤが何だか可愛くって、プっと吹き出してしまう。

「じゃあ、その原稿チェックしたら今日は終わり？」
「うん、一応。センパイは？」
「私はまだまだ掛かりそう...終電に間に合えば良いんだけど...」
「終電までまだ２時間はあるけど？」

ジャケットの袖を少し捲って腕時計を見たニノミヤが「そんなに仕事あんの？」って首を傾げた。

「ちょっとね...イイヒトぶっちゃったの。あー...バカだった」
「あー、ヒトの仕事まで引き受けちゃった系？」
「...系」

フハハ！って笑うと、ニノミヤはコロコロと椅子で滑って来て

「後で手伝ってやろうか？」

って、ニヤニヤする。

何か悔しいけど...凄い悔しいけど...

「...お願いします...」

私は、ペコリと頭を下げた。