コイカゼ・ダイブ 3rd【ars M.A】 (ページ10)

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80.ハナシノ・シンソウ。ページ10

学校では文化祭の準備が始まった。

大野先生が思った以上にノリノリで、「おれがお化け屋敷の看板を作ってあげる！」って言ってくれた。

用があって数学準備室に行くと、おどろおどろしい本格的な恐ろしい絵の看板の制作過程を見てしまって思わず腰を抜かした程。

本当は大野先生、自分がお化け屋敷したかったんじゃない？って、みんな言ってるけど

楽しそうな先生って何か見てて和むね、って結果的に癒されてたりもする。

校内が何となくお祭り気分で、ふわふわしてる頃

前の席の子が三つ編みしてて、ふと思い出した。

相葉先輩、何を言おうとしたんだろう...

やっぱり気になる。

その日、調度二宮先生の授業があったから授業終わりに先生を捕まえる。

「二宮先生！」
「ん？」

廊下を歩いてた先生は首だけクルっと振り向かせた。

「大坂、どした。何か質問？」
「あ...質問は質問なんですけど...」

並んで歩きながら、先生を見上げる。

「何よ、分かんないトコあった？」
「いえ...そーゆーんじゃなくって...」
「あー、オレの好みのタイプとか？えっとねー」
「全っ然、興味無いです！」

お前...って、ククッと笑った二宮先生は「答えられる事なら、先生が何でも教えてやるよ」って珍しく先生らしく言った。

「あの...前に相葉先輩が櫻井先輩の髪で遊んでたのを怒ったんですよね？」
「えー...あぁ、はいはい。あったなぁ。ンフフ、男同士でイチャついてるからさ。アイツら」
「その時、先輩に何か言ったんですか？」
「何か？おー、言った言った！」

ケラケラと先生が楽しそうに笑う。

「それ！教えて下さい！」
「マジで...？知りたい？」
「はい、知りたいです」
「ってかさ、それ相葉が言い出したの？」

ちょっと眉を顰めて困ったような笑顔になった先生が、頭をポリポリと掻いてる。

「...はい、そうですけど...」
「アイツ、マジで何考えてんのかね」
「え？」
「でも結局何の話だったかは教えてくんなかったんだ」
「そうなんです...だから気になっちゃって...」

あそこまで聞くと、やっぱり続きが気になる。

何でも無い！ってセンパイは必死で言ってたけど、その必死さが余計に気になる。

「教えてやっても良いけど...」

先生は国語準備室の扉を開く。

「ま、入んなよ。人に聞かれると恥ずかしいかもしんないから。大坂が」

緩く微笑んだ二宮先生の言葉に、一気に不安になったけど

「失礼します...」

とりあえず、私もその部屋に入った。