コイカゼ・ダイブ 3rd【ars M.A】 (ページ5)

今日:15 hit、昨日:13 hit、合計:971,940 hit

75.アカク・ソマル。ページ5

「バイバーイ！トモちゃん！」

相葉先輩の声にトモちゃんは驚いたように振り返って、ペコッと頭を下げて笑って

また走って帰って行った。

「トモちゃん、バイトしてんだね！何の仕事？」
「あ...えっと、ファミレスのウェイトレスさんです」
「へぇ！似合いそうだね！」

一度だけ見に行ったバイト中のトモちゃんは、制服も似合ってて可愛かった。

「Aちゃんは...」
「え...？」
「今から帰るんだよね？」
「...あ、はい」

ほっぺたを人差し指でポリポリと掻いた相葉先輩が「電車だよね？」って訊く。

「そうです...」
「俺も、電車」

ニッて笑うと、先輩は「じゃあさ！」って人差し指を立てた。

「一緒に駅まで帰ろっかー！」

ね！って、私の顔を覗き込むように首を傾げた先輩が

格好良すぎて、心臓が痛い。

「...はい...」
「帰ろー帰ろー！もう一日中学校に居るとちょー疲れる！」
「先輩、一日中学校に居るのは普通の事ですよ？」
「あ、そっか」

ケラケラ笑う相葉先輩の背中を追い掛ける。

櫻井先輩と一緒に帰った時も、緊張はしたけど今日の緊張はその時と全然違う。

ドキドキ、ドキドキ

綺麗な形の後頭部を見詰めてるだけで、ドキドキが止まらない。

「Aちゃんのクラスって、文化祭何すんの？」
「えっ？」

見詰めてた後頭部が、クルッと振り返る。

「あっ...お化け屋敷...？みたいです」
「お化け屋敷！アツイねー！楽しそう！」
「先輩のクラスは何するんですか？」
「あー...3年は有志なんだよね」

受験とかあるからさ！って、相葉先輩はちょっと残念そうに言った。

「翔ちゃんなんかは、参加しないと思う。受験勉強大変そうだし」
「そうなんですか...」
「でも、俺は参加するつもりだけどね！クラス単位じゃないから、仲良い奴らと好き勝手出来ちゃうし」

ヒヒヒッて笑う先輩と、肩を並べて歩く。

風が、相葉先輩の匂いをふわりと運んで来る。

「涼しくなって来たねー」
「あ...そうですね」
「もう秋だもんなぁ。いい加減俺も進路、決めなきゃなー」
「進路...」

___命短し、恋せよ乙女

この学校で、相葉先輩に恋できる時間はもうそんなに長くない。

赤く赤く染まる西の空

相葉先輩の横顔も、赤く染まってた。