コイカゼ・ダイブ 3rd【ars M.A】 (ページ33)

今日:16 hit、昨日:13 hit、合計:971,941 hit

103.ユメ・ミタイ。ページ33

「ヘ...ッグシュッ！」

相葉先輩が派手にクシャミした。

「やっぱり寒いですよね！？ごめんなさい、もう返しますから！」
「え？ううん、平気平気！きっと誰かが噂してんじゃないかなー？相葉くん、カッコイイー！って！」

うん、その噂はされてるかもしれないけど。

でも、先輩の腕はやっぱり鳥肌がプツプツしてて見てる私まで寒くなって来る。

「駅、もうすぐだし...私はもう大丈夫です」

私は名残惜しいけどパーカーを脱いで「ありがとうございました！」って先輩に押し付けた。

「...ホントに大丈夫？」
「はい！」
「ん、じゃあ...」

私の手からパーカーを抜き取った先輩が、それを羽織る。

さっきまで私の手を全部隠して、お尻の下までの長さだったパーカーを先輩が着ると

先輩の手は若干萌え袖にはなってるけどちゃんと見えてるし、裾は腰の位置にある。

それだけ私と先輩の身体の大きさには差があるんだなって思ったら、何だか妙にドキンとした。

パーカーにジャージ...って、別にお洒落でも何でも無いのに格好良く見えるのは、私が恋してるから？
それとも単純に先輩が格好良いから？...どっちもな気がするな。

駅に着いて、改札を二人で通る。

一緒に帰れるのはここまで。
帰る方向は、逆。

「じゃあ...さよなら」
「うん。...あ、Aちゃん」
「はい？」
「明日ってさ、代休でしょ？」
「はい、そうですね」

パーカーのポッケに両手を突っ込んだ先輩が、一瞬だけ目線を下に向けて、もう一度私を見た時

「明日、俺とどっか行かない？」

あんまり笑わずに、言った。

「...え？」
「あ、いや、ほら俺、感じ悪い態度とっちゃってたから...ごめんねって言うか...」
「...あの...」
「仲直りって言うか...」

あ...でも俺が勝手に勘違いしてたのに仲直りっておかしいか...って、ブツブツ呟いてる先輩。

「...何かもう約束あるかな」
「無い...無いです！全然無いですっ！暇ですっ！」
「ホント？」
「はいっ！ホントに...」

私が答えると、ニコッと笑って「じゃあLINE教えて？」って

スマホを出して、私の真ん前に立って

前髪同志が触れる位の距離でIDを交換して...

夢みたいだと思った。

私のスマホの中に、相葉先輩の連絡先が入るなんて、夢みたいだと思った。

「じゃあ、帰ったら連絡するね！」
「はい...」
「また、明日！」
「...また、明日」

学校が無い日に『また、明日』があるなんて

夢みたいだと、思った。