コイカゼ・ダイブ 3rd【ars M.A】 (ページ31)

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101.ドコガ・テッペン。ページ31

「若いって良いなぁ！」

二宮先生がケラケラと笑う。

「青春だねぇ」

大野先生が微笑む。

「すだち、出番？」

そんな二人に相葉先輩が訊くと、二人は「うん、次」って言いながらステージへ歩いて行った。

二人は何故か学ランを着てて「あれ、衣装なのかな...コスプレ？何、あの人達」って先輩が呟くから、何か面白くなってクスクスと二人で笑い合う。

そんな空気が、くすぐったくってやっぱり心がムズムズした。

「でもさ。山田くん、凄いね！勇気あんなー！カッケー」
「そうですね！私もビックリしました！」

トモちゃん、真っ赤だったけど

うるさい！って言ってたけど、でも嬉しそうだった。

「私も何か、嬉しいです」
「そだね、俺も何か嬉しかったもん」

そう言った相葉先輩が、優しく笑う。

...好き。

......大好き。

私も、山田くんみたいに伝えられたら良いのに。

胸がキュウっと縮む。

こんなに好きになって、これ以上ってあるのかな...

今が『好き』のテッペンなのかな...

「出た―！すだちー！」

ドキドキし過ぎて、ちょっと気持ち悪くなってきた私の隣で相葉先輩が大声で叫んだ。

ステージにはさっきの学ランに、更にサングラスを掛けた先生二人がスタンバってる。

「...変な先生達...」
「ニノちゃんは変だと思ってたけど、おーちゃんも割と変なんだね」

その出で立ちから、絶対にコミックバンドだ、これは。って思ってたんだけど

「...うっわ、マジで」

相葉先輩がポカンと口を開けてしまう程、先生達の出来栄えが良くて余計に『何者...？』感が大きくなる。

大野先生の綺麗な歌声に、二宮先生のギターとハモリ。

何、すだち。謎。

そんな事を思ってると、ヒュウ...っと、冷たい風が吹いた。

「...さむっ...」

カーディガン着てても秋の夜風は冷たくて、私は自分の身体を抱き締める。

「あ、Aちゃん寒い？」
「ちょっと...もう冬も近いですもんねぇ」
「だねぇ」

冬が近い...

卒業が近い...

考えたくない事が、これから増える...

その時、パサリ、肩に掛けられたグレーのパーカー。

「...え？」
「着てて良いよ」
「でもっ...」

パーカーを脱いだ先輩は、半袖で

よく見たら腕に鳥肌立っちゃってて

「先輩が風邪ひいちゃいますから！」
「大丈夫！男子は風の子！」

私にピースして見せる相葉先輩を、さっきよりも好きになった。

好きにテッペンなんて、無い気がした。