コイカゼ・ダイブ 3rd【ars M.A】 (ページ4)

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74.ホーム・ルーム。ページ4

黒板に『文化祭の出し物について』と書いてあって

教室の前の端っこに椅子を置いて、大野先生が座ってその黒板を眺めてる。

ある日の、帰りのホームルーム。

誰も発言しないから、なかなか帰れない。

「ねぇ、みんな何かやりたい事無いのぉ？」

大野先生が黒板から視線をクラスの皆に移して、端から端まで見渡した。

「こらー、露骨に目を逸らさないでよぉ。先生、ちょっとショック」

フフフッて笑った先生は、椅子から立ち上がって「じゃ、先生が何個か候補を出すから多数決ね？」ってチョークを手にした。

演劇

喫茶店

お化け屋敷

やっぱり国語教師(って、二宮先生になるんだけど)も真っ青の綺麗な文字で、サラサラと書き出して

「さ！行くよ、多数決！はい、演劇が良い人！」

あまりにもさっさと多数決を取り出した先生に誰もついて行けなくて

気付けば

「じゃあ、ここまで誰も手を挙げなかったからみんなお化け屋敷が良いんだね！決まりー！終わりーっ！解散っ！」

大野先生は赤チョークで、お化け屋敷って言葉をグルンと囲んで「また明日」って、語尾にハートでも付いてそうな言い方で挨拶をした。

「お化け屋敷って！どーする？変なお化けさせられたら！」

帰り支度をしたトモちゃんが、走り寄って来る。

「変なお化けって？」
「えー...あ！お岩さんとか！」
「じゃあ、可愛いお化けは？」
「んー...猫娘？」

可愛いかー？って笑いながら、二人で教室を出た。

「トモちゃん、今日もバイト？」
「うん、今日も！でも明日は休みだから、帰り寄り道しよーよ」
「だね！ポテト食べよう」
「ポテトー？太るー！」

明日の寄り道について計画を立てながら昇降口に降りると

綺麗な茶色い髪が、陽に照らされて透き通ってるように見える相葉先輩が

上履きから白いスニーカーに履き替えてた。

「あっ...A！」
「うん...っ！」

トモちゃんに、肘でツンツンとつつかれて唾をゴクンと飲み込む。

「あ...相葉先輩！」

俯いて靴を履いてた先輩が、そのまま目だけをこっちに向けた。

短くなってもサラサラの前髪の間から、大きな黒目が「あ！Aちゃん！」って言った瞬間にキュッと細くなる。

「今帰り？あ、トモちゃんと遊びに行くの？」
「えっ...あの...そうじゃないんですけど...」

私が緊張でしどろもどろになってると

「私はバイトなんで急いで帰んなきゃいけないんです！A、また明日ねー！」

トモちゃんは、慌ただしく走ってった。