コイカゼ・ダイブ 3rd【ars M.A】 (ページ21)

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91.アンシンノ・テノヒラ。ページ21

「俺も、実は後夜祭でアイツに告ったの」
「えっ！？そうだったの！？」

潤ちゃんと奥さんが高校の同級生だったのは知ってたけど、そんな話は知らない。

「で、結婚してんだからさ。そのジンクスってまんざらでも無いと思わない？」
「...ん」
「ハハッ、何その顔」
「だって...後夜祭を先輩と過ごせるとは思えないもん...」

学年も違う

先輩は、実はモテてるのだって知りたくなくても知ってしまう事だし

どう考えても、私には手が届かない気がしてしまう。

「神様は皆に平等にチャンスを与えてるんだよ？」
「え？」
「ほら、よく言うじゃん。チャンスの女神の後ろ頭はハゲだったって話」

チャンスの神様には前髪しか無くって、迷ってる内に自分の横を通り過ぎた女神の髪を掴もうとしてももうそこには何も無い

だから、チャンスだと思ったらすぐに手を伸ばせ！って、話。

「Aの前から走って来てんじゃない？女神様」
「...そう、なのかなぁ...」
「その前髪に手を伸ばすも伸ばさないもA次第だな！」

ポンと、潤ちゃんの大きな掌が私の頭の上に乗る。

昔はドキドキばっかりを運んで来てたその掌が、今は安心感をくれる。

「じゃ、俺他の教室も見て来るわ」
「うん...あのさ」
「ん？」
「ありがとね」
「何だよ、ハハッ！ま、頑張んなさい」

ニッと笑った潤ちゃんは「いやぁ、しかし懐かしいな」っておじさん臭く呟きながら、廊下を歩いて行った。

そのイケ過ぎてる姿に女子生徒が振り返ってるのが、ちょっと面白い。

「ねぇ、A！今のイケメン誰っ！？」
「あ、トモちゃん」

教室から出て来たトモちゃんが潤ちゃんの後姿を見ながら興奮気味に言った。

「幼馴染のお兄ちゃん。近所に住んでたの」
「あんな美形が小さい頃から近くに居たら、面食いにもなるよね」
「何その言い方ー」

アハハッ！って大声で笑い合う。

「トモちゃんはこれから休憩？」
「うん」
「山田くんと一緒に回るの？」
「んー...ちょっと面倒なんだけどね」

最近、隣のクラスの山田くんにやたらと押されてるトモちゃん。

「格好良いじゃん、山田くん」
「んー...まぁ、そうなんだけど...女子より美人ってのが何か怖い」
「アハハ！怖いって！」

きっとうちらの学年では一番のイケメンだよ？って言うと、トモちゃんは「別に私は面食いじゃ無いもん」なんて言ったけど

向こうから走って来た山田くんを見て、まんざらでも無い感じで可愛い笑顔を浮かべた。