コイカゼ・ダイブ 3rd【ars M.A】 (ページ20)

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90.リソウノ・オット。ページ20

「俺、焼きそば屋さんやってるの」
「焼きそばですか？」
「うん、それを伝えようと思って！来てくれる？」
「はい！もちろん、行きます！」

相葉先輩は「じゃあ待ってるねー！」って、たくさんの人で賑わう廊下を走ってった。

もう、ずっとニヤニヤが止まらない。

ニヤニヤしてる猫娘ってどうなんだろう。
違う意味で怖いかもしれない。

オレンジジュースにストローを挿した時、帯に挟んでたスマホが震えた。

「ん？」

チューっとジュースを飲みながら、廊下の窓の方に寄り掛かってスマホを見るとLINEが届いてる。

「え？潤ちゃん？」

差出人は潤ちゃんで、内容は『A、どこに居る？』

「どこって...」

『学校だよ！』

そう返すと、すぐに『それは分かってるよ(笑)文化祭でしょ？』って返事。

あれ？
私、潤ちゃんに今日が文化祭って言ったっけ。

『うん、お化け屋敷してる！ってゆーか何で知ってんの？』

そう返事をして、廊下で全部飲み切ろうとジュースを飲んでると

「A！」
「えっ！？潤ちゃん、どうしたの！？」

廊下の向こうから、スーツ姿じゃないオシャレな潤ちゃんが手を振りながら歩いて来た。

「暇だったから実家行ったら、Aのおばさんに会ってさ。今日文化祭だって聞いたから、来ちゃった」
「暇って...奥さんは？潤ちゃん、平日お仕事だし週末しか二人でゆっくり出来ないでしょ？」
「アイツは友達と一泊二日で温泉旅行なんだよ」
「そうなんだ。潤ちゃん、置いてけぼり？」

私の言葉にケラケラと笑った潤ちゃんは「たまには主婦も休んで貰わなきゃね」って、片眉を上げる。

「いっつも俺のお世話してくれてるからさ。自分の時間も大切にして欲しいし」
「良いなぁ...私、潤ちゃんみたいな人と結婚したい」
「フフッ、俺じゃなくって？」
「みたいな人！だってもう潤ちゃんとは結婚できないもん。それに...」

結婚、なんて今の私にはずっとずーっと先の話なのに

今、私の頭に浮かんだのは、恥ずかしいけど相葉先輩。

「そうだな！Aには、居るもんなぁ。先輩が！」
「まっ...まだ何も無いしっ...！」
「ねぇ知ってる？A」
「え？」

この学校の卒業生の潤ちゃんが、クスっと笑う。

「昔から言われてたんだけど、文化祭の後夜祭に好きな人と一緒に過ごせたら...ってジンクス」
「え？何々！？」

コソコソと、耳打ちで教えて貰った話に

胸がドクンドクンって、高鳴った。