コイカゼ・ダイブ 3rd【ars M.A】 (ページ18)

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88.オバケ・セイサク。ページ18

「ねぇ見てぇ！」

文化祭当日の朝、大野先生が作り上げたお化け屋敷の看板に女子の何人かが軽く悲鳴を上げた。

「あれ？駄目だった？」
「おーちゃん、駄目なんじゃなくって凄過ぎてちょっと引くんだよ」

クラスの男子達が先生に言って笑う。

「大坂さん、これどこに付けたら良い？」
「あ、ここです」

看板を持った大野先生に訊かれて、教室の入り口の上を指差すと先生はそこにあった脚立を使って看板を設置し始めた。

「でけたっ！」

パンパンと手を払って脚立から下りて来た先生は、私を上から下まで見て「大坂さんは、何の役なの？」と小首を傾げる。

くじ引きで決まった私の役は、トモちゃんが可愛いって言ってた猫娘。
でも、これのどこが猫娘なのか分からない...ってゆー、寸足らずの赤い浴衣と頭に猫耳を着けてるだけの出で立ち。

「それじゃ、どっちかって言ったら猫耳着けてるだけの座敷童だよねぇ」
「あ...それですね。猫娘では無いなと思ってたんです」
「あっ！おれが化粧したげる！」
「えっ！？大野先生が！？」

ねー、誰か演劇部から化粧道具借りて来てぇ！と、大野先生は楽しそうに言う。

クラスに居た演劇部の子が、部室まで走って持って来てくれた舞台メイクの道具で、先生は私の顔にペタペタとメイクを施す。

周りで見てる皆が、小さく歓声を上げるのが気になるんだけど鏡が無いから自分ではどうなってるか分からない。

「でけたっ！どう？」

先生から手鏡を渡されて、初めて見た自分の顔は

目を囲むアイラインでキュッと吊り目になってて、猫っぽい髭がチョンチョンと描かれてて

さっきよりずっと、猫っぽい。

「凄い、先生！何でこんなコト出来るんですか？」
「だって、化粧だって絵と変わんないもん。キャンバスが顔に変わったってだけで」

さて、皆の顔もやってあげるよ！って、先生は次々にお化けを作って行く。

「大野先生って、何の教師だっけ...」

先生に立派なお岩さんにして貰ったトモちゃんが、私の隣に来てゾンビ制作中の大野先生を眺める。

「...数学」
「だよね」
「トモちゃん、ハズレだって言ってたけど格好良いよ。お岩さん」
「ね。大野先生のお陰で、何だかスタイリッシュなお岩さんになれました」

二人でクスクス笑いながら、ドラキュラの格好をしてる男子を見て

あれ、相葉先輩にして欲しいなぁ...なんて思って

それだけの事で、顔が熱くなって来た。