コイカゼ・ダイブ 3rd【ars M.A】 (ページ14)

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84.センパイノ・オモワク。ページ14

パタパタと傘に雨が当たる音

ピシャピシャと小さな水溜りを靴が踏む音

濡れたアスファルトの匂い

左側を相葉先輩、右側を櫻井先輩に挟まれて通学路を歩く。

櫻井先輩は気を使ったのか、一人で先に行こうとしてたっぽいんだけど

私が口パクで「行かないで下さい！」って訴えて、一緒に居て貰った。

だって二人で歩くだけでも緊張するのに、更に相合傘だなんて二人っきりだと私、死んじゃう。

だけど、この両サイドどっち見ても男前が居るってゆー状況も...結局緊張...。

「Aちゃん、今日天気予報でそらジロー、雨降るって言ってたよ」

相葉先輩が「そらジロー、可愛いよね」って笑う。

「今日寝坊しちゃってテレビ観て無かったんです...」
「そっかぁ、俺と逆だね！俺は今日珍しくテレビ観れたから傘持って来れた」

傘を持つ相葉先輩の手は、やっぱり手の甲までカーディガンの袖が隠してて

萌え袖って、本当に萌える！なんて思ってドキドキする。

私もしてたら、相葉先輩にちょっとでも可愛いって思って貰えるかな...ってちょっと計算しちゃってモゾモゾとこっそり袖を伸ばしてみた。

右側に居る櫻井先輩は逆にちょっと袖をギュっと上に上げて手首の筋が見えてて、それはそれで格好良いなと思う。

私を挟んで喋る二人の、頭の上から降って来る声に朝から倒れそう。

「あ、大坂さんって帰りどうすんの？傘、無いんでしょ？」
「え...あぁ...止むかな...」

空を見上げると、ビニール傘の向こうの空は重い灰色。

「一日中雨だって言ってたよ、そらジロー」

同じように上を見た相葉先輩がポツリと言う。

「じゃ、帰りも雨降ってたら雅紀が送ってあげれば？」

櫻井先輩が「俺、今日ニノちゃんに進路の事で相談あるから居残りだし」ってこっちを見ずに、でも口元は笑って言った。

「うん、そうだね。帰りも降ってたら一緒に帰ろっか」
「えっ...」
「俺が先に終わったら教室迎えに行くし、Aちゃんが先に終わったら昇降口で待っててよ」

突然決まった事に何も言えずにいると、櫻井先輩が「約束してれば雅紀も早退しないしな！」って笑う。

１人で歩いてると長く感じる通学路なのに、あっとゆー間に学校に着いてしまって

昇降口で傘を畳む二人の背中を見る。

傘を畳んだ相葉先輩が自分の左肩についた雨粒をパンパンと払ったのを見て

初めて、先輩は私が濡れないように傘を寄せてくれてたんだ...って気付いて、胸がギュっとなった。