コイカゼ・ダイブ 3rd【ars M.A】 (ページ2)

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72.ウソハ・ツカナイ。ページ2

水やりが終わったのか、ジョウロをブンブン振りながら二宮先生が窓に近付いて来て

桟に肘を置いて、私の顔を見た。

「さっきの、秘密な？ホント頼むよ？」
「あー...たば...」
「シーッ！...誰かに聞かれたらどうすんの」
「自業自得なんじゃないですか？」
「...お前、結構意地悪だなぁ」

いつもはツンとしてる二宮先生が、ほっぺにちょっと空気を入れて唇とんがらせてブゥって顔してる。

そう言えば、この人って何歳なんだろう。
今の顔は完全に、高校生みたいなんだけど...

「ねぇ、先生」
「ん？」
「先生って、何で教師になったんですか？」
「ンフフ、そんなの聞きたい？」

だって、全然先生っぽくない。

熱さなんて皆無だし、優しいかって言われたらそれも微妙だし、あ、授業は面白いかもしれない。

だけど、やっぱり先生特有の威圧感も無いし...顔は良いけど、それって別に先生に必要な条件でも無いし。

「子供が好きだから」

あれ？聞き間違えたかな？
本気でそう思ってしまう答えに、「はい？」って訊き直してしまう。

「子供が好きだから」
「......」
「何だその、『嘘つくなや！』って顔は」
「そんな顔...あ、したかな...しましたね」

フハハッ！って大笑いすると、先生は私のおでこを拳でトンと軽く叩いた。

「いてっ」
「オレ、嘘はつかねぇよ？教育者としてそれだけはダメでしょ」
「...ホントに子供が好きなんですか？」
「んー、ちょっと語弊があるかもしんないな。お前らの年代が好きなの」

やっぱり、先生にしては美形すぎるかな？って顔を柔らかく綻ばせて桟に掛けてた腕で頬杖をつく。

「オレ、高校の頃あんまり学校好きじゃなくって。あ、相葉みたいな。ほとんど学校来ないし来ても授業出ない...みたいな」
「先生が？」
「意外？」
「いえ...そんな意外でも無いです」

お前ってホント正直だな！って言った先生が話を続ける。

「相葉と違ったのは、体育祭や文化祭にも参加しなかった...ってトコかな」
「そうなんですか？」
「何かさぁ、そんな奴の方が格好良いって思ってたのよ。男子って、そーゆー時があんの！」
「そうなんですか」

高校時代の二宮先生...どんな感じだったんだろう。

顔は...まぁきっとほとんど変わってないんだろうな。
って事は...

「モテたんでしょうね、高校生の先生」
「ん？今もモテるけど」
「...あー...」
「お前、ホント反応が失礼だよな！」

先生が笑いながら、また私のオデコにコツンと拳を当てた。