コイカゼ・ダイブ【ars M.A】 (ページ5)

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5.コイニ・オチル。ページ5

「相葉、卒業する気あんのかね」
「そこはどうにか卒業させてやってよ」
「えー...アイツ次第じゃね？好きにさせてやれば？相葉の人生じゃん」
「ホント、ニノちゃんって先生らしくないよね」

呆れたように櫻井先輩が笑って、先生は「問題児のお世話疲れるんだよ。櫻井はイイコなのになぁ」って櫻井先輩の頭をグリグリ撫でた。

「お前もイイコだな！」
「えっ！？」
「お花の水やり、偉いぞぉ！」
「うわっ！」

二宮先生は窓から手を伸ばし、私の頭もグリグリ撫でたかと思ったら

「あー...眠たい...」

と零して、窓の中に消えた。

「...お騒がせしちゃってホントごめんね」
「あ...いえ...」

櫻井先輩とお互いグリグリされてボサボサになった髪を直しながら、ペコペコと頭を下げ合う。

「じゃあね」
「あ、はい」

ヒラヒラと手を振って、櫻井先輩も窓の中に消えてその足音が聴こえなくなった時

足元にしゃがんで息を殺してた相葉先輩が立ち上がって「ありがと！」って、笑った。

「えっ...！？いや...はい...とんでも無いです...！」
「ねぇ、何ちゃん？」
「え...？」
「お名前！」

そう言うと、私のセーラー服に付いてるピンバッチの色を見て「一年生だ」って微笑む。

「はい...あのっ...一年B組の大坂Aです...」
「Aちゃんね！ありがと、今度お礼するから！」
「えっ！？そんなの良いです！！」
「良いから良いから！パンでも奢らせてー」

ちょっと肩から下がったリュックを担ぎ直しながら、相葉先輩は私の顔を覗き込んだ。

「うん、顔も覚えた！」
「...え...」
「じゃあ、またね。Aちゃん」
「あ...あのっ！」

背中を向けてた相葉先輩が「ん？」って振り返る。

「...もう帰るんですか...？まだお昼...」
「フフッ、Aちゃんはイイコそうだもんね。俺の真似しちゃ駄目だよ？」

右頬を上げて笑う相葉先輩は、ちょっと大人っぽく見えて

私の胸は、聞いた事も無い位にバクバク大音響で鳴り出して

走り去る相葉先輩の背中を、熱い熱い頬を押さえながら見てた。

あんな近くで初めて顔見た...。

ほっぺにホクロ、あったんだ...。

何か良い匂いした...。

「ヤバイ...どうしよう...」

『Aちゃん』って呼ばれた...。

顔、覚えたって言われた...。

ザァッと吹いた風が、裏庭の木々を揺らし

私の髪を靡かせる。

今までは、単なる憧れで好きだったのに

アイドルみたいな感じで好きだったのに

私、今

たった今

『恋』に堕ちた。