コイカゼ・ダイブ【ars M.A】 (ページ32)

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32.センセイノ・オアソビ。ページ32

相葉先輩がリレーに出る前にトイレに行って、急いで校舎から校庭に出た所に二宮先生と大野先生が居た。

大野先生は黒いジャージに白いTシャツ。

そう言えば、白衣以外の大野先生を見るのは入学式のスーツ姿以来かもしれない。

何だかふにゃふにゃしてるなーって思ってたけど、Tシャツに包まれた肩や背中は骨っぽくて結構男っぽかったんだなぁ...なんて、思う。

その大野先生が、やっぱりふにゃっと二宮先生に笑いかけた。

「二宮先生、今年もうちが勝つねぇ」
「まだわかんねぇよ？今年のうちには相葉が居るかんね」

白いポロシャツにグレーのスウェットで、何だか部屋着風味な二宮先生もポケットに両手を突っ込んだまんま大野先生に笑う。

今の時点ではB組が1位で、A組は2位。

最後の団対抗リレーで勝敗が決まる。

「忘れんなよ？負けたらビールだかんな？」
「フフッ...二宮先生こそ、踏み倒そうとしないでよ？」
「はぁ？去年は負けてちゃんと奢ったろうが」
「おれが何度もしつこく言ったからでしょ？」

マジしつこかったな、って笑った二宮先生が振り返って私を見た。

「あ、大坂」

大野先生も振り返り、柔らかく微笑む。

「大坂さん、どしたの？」
「先生達は生徒で賭けをしてるんですか？」

私の言葉に二人は顔を見合わせた。

「えっ、あ、いやいや...んなワケねぇじゃーん！」
「そうだよ、大坂さん。ちょっとしたゲームだよ？負けた方がビール奢るってだけ」
「ちょ、大野さん...それが『賭け』でしょうよ」
「あ、そっか」

やっぱりクラスの男子とあまり変わらない先生達を見てると、何か可笑しくなって来る。

「なぁに笑ってんのよ」

片眉を上げた二宮先生が、私の顔を覗き込む。

「いえ、何でも無いですよ！」
「ふーん、あ、ってか大坂こんなトコに居て良いの？」
「え？」
「リレー、始まっちゃうよ？」

クスリ、二宮先生が口角を上げた。

「あっ...！？えっ...」
「早く戻った方が良いんじゃね？」
「...はい...」
「絶対、カッコイイよ」

主語が無いのに、先生が何の話をしてるのか分かるから恥ずかしい。

「何がカッコイイの？」

大野先生がキョトンとしてる。

「大野さんには関係無いよー」
「何で！大坂さんはおれの生徒！」
「オレの生徒でもあるわ」
「おれ、担任！」

また高校生みたいに言い合う先生達に「失礼します！」って頭を下げて

私は走って校庭に戻ると

フィールドに、ハチマキをギュッと結び直す相葉先輩を見付けた。