コイカゼ・ダイブ【ars M.A】 (ページ31)

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31.シセンノ・サキ。ページ31

体育祭の日は、ありがちな『雲ひとつ無い晴天』ってやつで

どんなに日焼け止めを塗っても、きっと意味無いんだろーなーって感じ。

「A、首の後ろ塗ってー」
「うん、後で私にも塗ってね」

意味無いだろうなと思ってても、せっせと日焼け止めを塗り合う私とトモちゃんは

B組団の緑ハチマキを巻いて、隣のブロックに座ってる赤ハチマキを巻いたA組団を羨ましい気持ち全開で眺める。

三学年お揃いのTシャツももちろん羨ましいし、その赤いハチマキも羨ましい。

「格好良すぎる...どうしよう...」

半分泣いてるよーな声でトモちゃんが呟きながら見詰める先には、櫻井先輩。

団長の櫻井先輩は素肌に学ランを羽織って、他の人よりも長いハチマキを巻いて

それはそれは、格好良くて

流れる汗も、キラキラで

「あの掠れちゃった声が...もうヤバイよ...A、どーしよう...」

応援のし過ぎで掠れて来てる声が、妙に色っぽい。

「ハチマキ...下さいなんて、言えない...」
「トモちゃん...」
「あんな人に、近付けない...」

好きなのに、好きだから、近付けない。

好きなのに、好きだから、泣きたくなる。

「...けど、あの櫻井先輩が見れるだけでも幸せ」

トモちゃんは、柔らかく微笑む。

「だね...見れるだけで、良いのかも...」

だけど、私は欲張りで

やっぱりまた、相葉先輩と話したいって思ってしまうんだ。

「でもほら！Aは予約したんでしょ？ハチマキ！」
「んー...そうなんだけど...」

なのに、私は意気地無しで

いつどんなタイミングで相葉先輩に声を掛けたら良いのか分からない。

せめて、同じA組だったら...

なんて、また羨ましさ全開に赤いハチマキ軍団を眺める。

その中に居る相葉先輩は、櫻井先輩の学ランを脱がそうとしてる。

「翔ちゃん、暑いでしょ！？」
「やめろっ！これ脱いだら俺、裸なんだからな！？」
「汗凄いよ！脱いじゃえ、脱いじゃえ！」
「やぁだーっ！やーめーてーっ！！」

トモちゃんが割と本気で「相葉先輩、頑張れ！」って呟きながら拳を握った。

そんなトモちゃんに笑いながら、私も二人の姿を見る。

二人の攻防戦は相葉先輩の勝利で、櫻井先輩は学ランを脱がされて上半身裸になっちゃって

必死に両腕で何故か胸を隠してて

トモちゃんは「ありがとー！相葉先輩！」って、何故か私に抱き付いた。

けど私の視線は、裸の櫻井先輩より

櫻井先輩の学ランをはしゃいで羽織った相葉先輩。

赤いハチマキが、眩しい。