コイカゼ・ダイブ【ars M.A】 (ページ30)

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30.ヤッパリ・ヤッパリ。ページ30

「若林先輩だ...」
「え...？」

トモちゃんが、相葉先輩達を見ながらポツリと呟いた。

「相葉先輩と一緒に居るの、若林先輩。中学一緒だったの」
「...そ...なんだ...」
「A...大丈夫...？」

何故かトモちゃんまで私と同じような顔になって

さっきまで勢い良く親子丼を食べてたお箸もピタっと止まってしまってる。

「...大丈夫！うん、大丈夫だから！」
「A...」
「うん...大丈夫...」

何が大丈夫なんだろう、って思う。

「ねぇ、A！彼女居るなんて、聞いた事無いよ！」
「え...？」
「ほら、相葉先輩に彼女が居るなんて...そんな噂、聞いた事無いもん！友達だよ、若林先輩は！」

彼女が居ない、って噂も聞いた事が無いんだけど

それは言わずに「そうだね」って、トモちゃんに頷いた。

「あんなにいっぱい女子の友達居るんだから、さ」
「うん...そうだよね、トモちゃん」

櫻井先輩も、お弁当を食べながら女の子と喋ってる。

もちろん、男子とも喋ってるのに...何でだろう...

女の子と喋ってる姿ばっかりが、目に入ってしまう。

「私だって、櫻井先輩を『しょーくん』って呼びたい...」
「私だって、相葉先輩を『まーくん』って呼びたい...」
「何で私達は、一年生なんだろうね...」
「何で先輩達は、三年生なんだろうね...」

スッカリ食欲が無くなった私達は、溜息を吐き出して遠い席に座る先輩達を眺めた。

相葉先輩と、ちょっと近付けたと思ってた。

会えば「Aちゃん！」って名前を呼んでくれて、喋ってくれて

アイスもくれて

ハチマキの予約も出来て

少しづつ、少しづつ、私は相葉先輩に近付けてると思てったのに

やっぱり、遠いのかな。

使ってる校舎も違うし、ジャージの色も違う。

「うちのお母さんも二年早く頑張ってくれたら良かったのに...」
「ホント、もう二年早くパパとヤってくれたら...」

相葉先輩と若林先輩は、同じ唐揚げ丼を一個のトレーに乗せて

そのトレーは相葉先輩が持って

若林先輩は、ふわふわの髪を靡かせる。

「教室、戻ろっか...」
「そうだね、トモちゃん。そうしよう...」

私達は食事もそこそこに席を立って、トモちゃんが食器を返しに行くからカウンターまでついてって

何となく、相葉先輩達が座ってる席に目をやった。

そしたら、美味しそうに唐揚げを頬張ってる相葉先輩と目が合って

ドキン、と胸が跳ねた私に、お箸を持ってる手を振る相葉先輩は

...やっぱ、カッコイイんだ...。