コイカゼ・ダイブ【ars M.A】 (ページ28)

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28.サンネンセイ・ジョシ。ページ28

その存在を知ったのは、その日のお昼だった。

お母さんが風邪ひいちゃってお弁当が無いトモちゃんに付き合って、食堂にご飯食べに行った時。

親子丼を注文したトモちゃんに「一口ちょうだい」って言いながら、自分のお弁当を開く。

「あのね、トモちゃん...」

相葉先輩のハチマキの予約が出来たコトを話そうとしたら、トモちゃんが私の腕をギュって掴んだ。

「何？」
「...A！先輩達、来たよ！」
「えっ！？」

トモちゃんが見てる先を振り返って私も見たら、そこには朝とは違って制服を着てる相葉先輩。

みんな半袖のシャツを着てるのに、相葉先輩は長袖のシャツを腕捲りしてて

みんなシャツの裾を出してるのに、相葉先輩は少し腰を落としたパンツにインしてて

何かもう全部が格好良くって、全部が好き！って思う。

「櫻井先輩...カッコイー...」
「え？」
「え？って何よ。Aには相葉先輩しか見えて無いんでしょ？どーせ！」

トモちゃんがコソコソ話しながら、でも嬉しそうに笑った。

相葉先輩の隣には、やっぱり櫻井先輩が居て何だかケラケラ笑ってる。

凛々しい眉毛が八の字になっちゃって、ホント楽しそう。

「もー！可愛い、櫻井先輩！」
「うん、楽しそうだね」
「ねー。良いなぁ...私もあの中に入りたい」

あの中、とトモちゃんが先輩達を眺める。

そこに居るのは相葉先輩と櫻井先輩、だけじゃない。

朝も先輩達と一緒に居た何人かの男子。

それと、

何人かの、女の子。

「私達もさ、あと二年早く産まれてたら、あーやって先輩達と同じクラスになったり...って事もあったんだよねぇ」
「うん...そうだね...」
「ママ達、二年早く頑張ってくれたら良かったのに！」

ちょっと下品なコトをムゥゥとした顔で言ってるトモちゃんをよそに、私は相葉先輩と一緒にいる女の子達が気になって仕方なかった。

たった二歳しか違わないのに、すっごく大人に見える三年生。

綺麗な栗色の髪がフワフワ揺れるのを見て、思わず自分の髪と比べてしまう。

肌が白いのは、ファンデーションを塗ってるから？
頬がピンクなのは、チークを塗ってるから？
唇が少し赤いのは、リップを塗ってるから？

きっと、今の私がしても全然似合わなくってウケ狙いにでもになっちゃいそうなメイクも、三年生の彼女達には似合ってて

そんな大人っぽい女の子が相葉先輩の隣で笑ってるのは

凄く、自然で。

自分が相葉先輩の隣に居る姿を想像したら、何だか、悲しくなった。