コイカゼ・ダイブ【ars M.A】 (ページ27)

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27.ヨヤク・カンリョウ。ページ27

「Aちゃん、遠慮しないでって言ったでしょ？」

突然の相葉先輩の言葉に、私は「へ？」って気の抜けた返事をしてしまった。

「お礼、するからさ！何でも言ってよ！」
「...お礼...」
「うん。購買のパンが嫌だったら、コンビニでアイス買って来てあげるよ？」

あー、アイスどこで買ったんだろうって思ってたけど学校を出てコンビニに行ってたのか...なんて別に今考えなくっても良い事考えちゃって

そんな事に頭は回るのに、相葉先輩の言葉には上手く返す言葉を見付ける事が出来ない。

「何か欲しいモン無い？あ、俺にして欲しいコトでも良いけど」

...して欲しいコトなんて、いっぱいあるけど！

だけど、どれも先輩には言えないようなコトばっかりだよ！

私がして欲しいコト、先輩が知ったらドン引きだよ！

そんなバカみたいなコト考えてた私の逆上せ上がった頭が

「あ...欲しいモン...」

やっと動き出して

「あ、ある？」
「...ハチマキ...」

すっごく欲しいモノがあった事を思い出した。

「体育祭の...ハチマキ...」

でも、言ってから、言ってしまってから『断られるかもしれない』って怖くなって

「...何でも無いです！何もいらないです！」

顔の前で両手をブンブン振った。

「体育祭のハチマキ？」

だけど、相葉先輩に聴こえてしまってた私の欲しいモノ。

先輩は手首を揺らしてアイスの棒を振りながら、私の目をジっと見る。

断られるのが怖くって、その目から視線を外した私に先輩は「良いよ」って

「え...？」
「ん？良いよ、って言ったの」
「えっ！？」
「ただ俺、すっげぇ汗っかきだからね！汗、ダックダクに染み込んでるよ？絶対臭いよ！」

ケラケラ笑う相葉先輩に、クラクラする。

「あー...授業、面倒だなぁ...」

コメカミを流れる汗を、今度は肩を上げて体操服でキュっと拭く。

それだけの仕草ですら、格好良い。凄く、格好良い。

「...サボるんですか？」
「んー？あ、一緒にサボっちゃう？」
「えっ！？」

相葉先輩とオサボリ...素敵！

でも...

「駄目です！」
「え？やっぱダメ？」
「二宮先生に怒られますよ？」
「あー、そうだ。ニノちゃんだった、次」

アチャー、って顔をする先輩は「あ！着替えなきゃ！」って慌てて「ごめん！俺、戻るね！」って走って行った。

先輩とオサボリ、ちょっとしたかったな...と思いながら

ハチマキの予約が取れた事はちゃんとトモちゃんに話そうって決めて、私は廊下を歩き出した。