コイカゼ・ダイブ【ars M.A】 (ページ24)

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24.トケル・アイス。ページ24

相葉先輩に口の中へアイスを突っ込まれて

しかも、そのアイスはさっきまで相葉先輩の口に入ってたアイスで

アワアワなって木の棒を持って口からアイスを出した私なんてお構い無しに、

「よいしょっ！」

相葉先輩がヒョイッと窓枠を跳び越えて、裏庭から廊下に入って来た。

「わざわざ、ありがとね！Aちゃん！」

パタパタと廊下を走って行く、後ろ姿。

手に残った、アイス。

心臓、しんどい。

「大坂さん？」
「あっ！？あっ！！」

小脇に分厚い週刊漫画を抱えてる櫻井先輩が、知らない間に廊下に来てて私の隣に立ってて

「アイス、溶けてるよ？」
「あっ！！」

溶けたアイスが手首まで流れてるのを指差されて、慌ててパクッとアイスを咥えた。

けど咥えた瞬間に「だからこれ、相葉先輩の食べ掛け！」って思い出して

また慌てて口から出す。

そんな私を見て、フフッて櫻井先輩が笑って

何だか、トモちゃんにゴメンって思っちゃう。

「さーて、俺も教室戻ろうかな！大坂さんも戻るでしょ？」
「あ...はい、戻ります！」
「その前にアイス、食っちゃわなきゃね」
「あっ！はい...食っちゃわなきゃ...ですね」

ポトポトと、溶けたアイスが廊下に落ちる。

落としたまんまのスマホが、そこにある。

「これ、大坂さんの？」

櫻井先輩が、それを拾ってくれた。

「すいませんっ！ありがとうございますっ！」
「ハハッ！そんな大袈裟な！」

ケラケラ笑われて、恥ずかしくなる。

アイスでベタベタになってない方の手でスマホを受け取ると、「じゃ、またね」って先輩は三年生の教室がある方へ歩いてった。

残された私は、溶けたアイスをやっぱり食べる事が出来なくて

ドキドキし過ぎて、食べる事が出来なくて

でも、捨てる事なんてもっと出来なくて

ただただ溶け切るのを、待ってみた。

「あ...」

溶けてくアイスの向こう側に見えた『一本あたり』の文字。

「当たっちゃったよ...」

ベトベトの手を洗う為に行ったトイレの水道で、私はアイスに刺さってた木の棒も綺麗に洗って

水を切るように、ブンブン振りながら廊下を歩いた。

当たりの棒は、また相葉先輩に会える口実になる気がして

「当たってましたよ！」って、相葉先輩に話せるキッカケになる気がして

教室に戻った私は、その『一本あたり』の棒を大野先生が書いてくれた水やり当番のメモと一緒に、手帳に挟んだ。