コイカゼ・ダイブ【ars M.A】 (ページ21)

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21.ホシイ・ハチマキ。ページ21

「何で私達はＢ組なんだろうね」
「何で先輩達はＡ組なんだろうね」

翌日の昼休み、お弁当を食べながらトモちゃんと私は体育祭のチーム分けについて不満を漏らしてた。

「縦割りなんて芸が無いと思わない？」
「だよね、トモちゃん！シャッフルしたら良いじゃんね！」
「何で私達はＢ組なんだろうね...」
「何で先輩達はＡ組なんだろうね...」

結局、同じ所で話は止まる。

縦割りで各学年のＡ組からＥ組までで５チーム作られ、一応競う形になる体育祭。
Ａ組の相葉先輩と、Ｂ組の私は当然別チーム。

どうせなら同じチームで、堂々と相葉先輩を応援したかったのに。

「あっ！そうだ！応援団の話、聞いた！？」

そう言うトモちゃんの目が一気にキラキラした。

「応援団？ううん、聞いてないけど...」
「Ａ組の団長、櫻井先輩なんだって！」
「なぁんだ...相葉先輩じゃないんだ...」
「ちょっと！ガッカリしないの！」

そりゃ、櫻井先輩の団長姿も絶対、絶対格好良いだろうけど

だけど、相葉先輩が団長だったら、もっと格好良い！...なんてトモちゃんに言ったらぶたれそう。

「それとね、A」
「ん？」
「体育祭ってハチマキ、巻くんだって」
「...それがどうかしたの？」

トモちゃんは周りをキョロキョロと見渡して、ちょっと私に顔を寄せた。

「欲しくない...？先輩が巻いたハチマキ」
「...欲しい...！」
「欲しいよねぇ！でも櫻井先輩、競争率高いんだろうなぁ...」

別に、『好きな人のハチマキを貰ったら恋が叶う』って類のジンクスがある訳でも無い。

ただ単に、好きな人が巻いたハチマキが欲しいってだけ。

それだけの事が、女子高生にはやっぱり大問題。

「ライバルいっぱいだよー...」
「相葉先輩もモテそうだもんなぁ...」

たった一本のハチマキ。

貰えるのは、たった一人。

...貰える気がしない...

ハァ...って溜息を吐き出して、ふとセーラー服のポケットの中に違和感を感じて手を入れてみると

「あ...」

昨日、相葉先輩がくれたガム。

顔がポっと熱くなったのが分かる。

「A、そのガム何？」
「...相葉先輩に貰った...」
「えぇっ！？ズルイ！もうハチマキなんていらないじゃん！！」
「それとこれは別ー！」

ほっぺがユルユルに緩む。

さっきまでハチマキ問題にモヤモヤしてた私のココロは、一枚のガムで晴れ渡る。

だけど、やっぱりハチマキだって欲しい。

欲張りになっちゃうのは

恋してると、当たり前の事なのかな。