コイカゼ・ダイブ【ars M.A】 (ページ17)

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17.ジュウダイナ・モンダイ。ページ17

「その先輩と両想いになれたら良いなぁ！」
「ちょっ...まだそんなんじゃないから...」
「女は度胸！グイグイ押せ押せ！」

黒縁眼鏡の向こう側にある綺麗な、目。
ホクロが見え隠れする、唇。
低く響く、声。

全部が好きだった、潤ちゃん。

大きな手で、ポンッと私の頭を撫でて「じゃ、気を付けて帰れよ？」って笑う潤ちゃんを

ちゃーんと吹っ切れたのは、相葉先輩と出会えたから。

そう思うと、もっともっとキュンとして

早く相葉先輩に会いたくなった。

だけど、少女漫画みたいに都合良くは進まなくって

一回目の当番の時は、先輩いなくって

二回目の時は、大雨で水やりすらしなくてよくなっちゃって

トモちゃんに「運命の悪戯だよ...」ってボヤくと「神様は意地悪だね...」と慰めてくれた。

今までと同じ、火曜の一時間目と金曜の五時間目に窓から見るしか出来ない相葉先輩の姿。

それでも、やっぱり格好良くて胸はいっつもドキドキと高鳴る。

今日も相葉先生は、スタイリッシュにミドジャーを着こなしてハードルを跳び越える。

「もーすぐ水泳、始まるなぁ」
「えっ！？」

頬杖ついて窓の外を見てた私の横にいつの間にか立ってた二宮先生が、腰を折ってヒソッと囁いた。

「えっ...あっ...あのっ...」
「はい、大坂。ここ読んで」
「...はい...」

ニッと笑った先生に指示された所を、立ち上がって音読する。

教科書を読みながら

そうだ！水泳始まったら、体育でも先輩校庭に出て来ないじゃん！

って思ってたら、派手に噛んだ。

「え？大坂、今の噛むよーな言葉か？」
「...すみません...」

クスクス笑い声が広がる。

恥ずかしいー...って思ったけど

それよりやっぱり、水泳が始まってしまう事の方が私には重大で

授業が終わっても、ずっとずっとその事ばっかり気になり続けた。

「A、どーしたの？何か、変だよ？」

休憩時間にまだ体育の片付けをしてる櫻井先輩を見る為に私の席まで来たトモちゃんが、校庭を見ながら私に尋ねる。

「トモちゃん、もーこうやって片付けしてる先輩達が見れなくなるよ...」
「えっ？何で？」
「だって、水泳始まる...」
「...あっ！ホントだ...えー...」

私も校庭を見たら、相葉先輩と櫻井先輩が何か喋って大笑いしてる。

「A、先輩達の水着姿...見たいね」
「見たいー！相葉先輩、スタイル良いの！」
「櫻井先輩なんて細マッチョだもん！」
「相葉先輩だって！」

相葉先輩が校庭で大きなクシャミをした。