コイカゼ・ダイブ 6th【ars M.A】 (ページ8)

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183.ホ・カク。ページ8

「つーかまーえたっ！」

私を胸に抱き締めながら、相葉先輩が笑う。

教室でこんな事してたら、誰かに見付かっちゃうかもしれないのに
離れなきゃ！って心の端っこの方では思ってるのに

心の真ん中が、このまま先輩にハグされてたいって思っちゃってるから、離れられない。

私はずっと、先輩に捕まえられてるんだ。

きっと、初めて体育館で先輩を見たあの日に私はもう先輩の虜になってて

裏庭で会った時には、気持ちをグルグルに縛られて、捕まえられちゃったんだ。

私を「捕まえた」って抱き締める腕が、愛おしくて愛おしくて、苦しい。

先輩の匂いが胸いっぱいに広がって、息も出来ない。

こんな気持ち、初めてだ。

怖い

怖い

怖い位に、先輩の事が好き。怖い。

「ん？どしたの？」
「...え...？」
「震えてる...寒い？」
「あ...ううん、そうじゃなくって...」
「ん？」

先輩の腕に、ギュウって力が入る。

怖い、って思ってた気持ちが萎む。

「...先輩、私...」

私も先輩の背中に腕を回して、学ランをグっと掴む。

ずっと憧れてた、背中。
ずっと触れたかった、学ランに包まれた先輩の背中。

「あれぇ？まだ誰か残ってるの？」

いきなりガラリと扉が開いて、続けて「あっ！」って声がした。

「ぅわっ！！」

先輩がパッと私から手を離して、何故か勢いよくバンザイをした。

私も慌てて両手を後ろに組んだ。

「ちょっとぉ、何やってんの？...あ、何やってたかは分かってるんだけどぉ」
「...おーちゃん...」
「相葉くん、おれの生徒に手を出さないでくれるぅ？」
「あ...えっと...」

眉間に皺を寄せて、口を尖らせるようにして話しながら大野先生が教室に入って来る。

「なーんて、うっそ！別に男女交際禁止じゃないもん、うち」
「もー...おーちゃん、ビックリさせないでよ！」
「ビックリしたのはおれだよぉ！誰も居ないと思った教室で若者が愛を育んでたんだから！」
「ちょっとそれ、言い方が嫌だ...」

フフッて笑った大野先生が、何も言えずに立ち尽くしてる私を見た。

「大坂さん、今日ボーっとしてたのは恋の病だったんだね」
「へっ！？」
「あ、おれもしかしてすっごいお邪魔した？」

先生のその言葉に、先輩が「ちょー邪魔！」って先生の腕をポスンと殴った。

「仲良くするのも良いけど、高校生らしくね？」
「何それー！おーちゃん、やらし！」

高校生らしく...じゃあ、高校生らしくないって何...？

そんな事考えて、またドキドキした。