コイカゼ・ダイブ 6th【ars M.A】 (ページ33)

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208.オニイ・チャン。ページ33

今日は先輩も、駅で一緒に下りてくれる。

「家まで送る、って言ったでしょ？」って手を繋いでくれる。

地元の駅前を二人で歩きながら、相葉先輩から専門学校の話とか聞いてたら

「あれ？A？」

後ろから声を掛けられた。

え？って振り返ったら、スーツにトレンチコートの潤ちゃん。

黒縁眼鏡の向こう側の目が、優しく細められてる。

「あっ！潤ちゃん...」

何だか恥ずかしくなって、繋いでる手を離そうとしたら

先輩がギュウって強く握って来て、離せなかった。

「A、今帰り？」
「うん...潤ちゃんも？」
「うん。今日はちょっと早く終わったんだ。...えっと、もしかして」

潤ちゃんが、チラっと先輩を見て「彼が『先輩』...、かな？」って笑う。

「相葉雅紀です」

先輩がペコって頭を下げる。

潤ちゃんも、そんな先輩を見てペコっと頭を下げながら「初めまして、松本潤です」って自己紹介した。

「関係としてはAの兄ちゃん、みたいなモンかな」
「...俺、初めましてじゃないんです」
「え？」
「文化祭の時、お兄さん見ました。Aちゃんと一緒に居たの、見ました」
「あ、そうだったんだ？」

「おっ」って潤ちゃんがビックリした顔する。

「俺、Aちゃんの彼氏だと思ってヤキモチ妬いたんです」

先輩がちょっと口を尖らせて話す。

「俺がAちゃんの彼氏になる予定なのに！って、思ったんです」

えぇぇっ！？って思う。

確かにあの時先輩の態度はおかしくなってたけど、それは彼氏が居る子と仲良くしちゃいけないと思ったから...って言ってたのに。

顔が熱い。

「ハハハッ！俺が彼氏だったら、オジサン過ぎるでしょ。もう、Aは妹だよな？」
「うん、潤ちゃんとは兄妹だよね」
「歳、15も離れてるからなぁ」

昔は潤ちゃんにこんなコト言われたらショックで、泣いちゃう位だったのに

今は全然、大丈夫。
全然、傷付かないし平気。

先輩が繋いでる手を、更にギュウってして来る。

「さーてと、奥さんが美味しい飯作って待ってるから俺は帰ろうかな」

眼鏡をクイって上げながら、スーツ姿の『お兄ちゃん』が微笑んだ。

「あ、相葉くん」
「はい」
「ちょっと、良い？」

潤ちゃんが、先輩を手招きする。

「俺...？」
「うん、ちょっと良いかな」
「あ...はい」

先輩が私を見てソっと手を離し潤ちゃんの前まで近寄ると

潤ちゃんは、先輩の肩を抱いて私に背中を向けた。