コイカゼ・ダイブ 6th【ars M.A】 (ページ29)

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204.ドンドン・フクラム。ページ29

一瞬だけ触れた唇は、少し冷たく感じた。

私の左頬を右の掌で包んだ先輩が、ドラマみたいに少し顔を斜めに傾けて

もう一度、私にキスをした。

さっきより、強く押し付けられるようにされて心臓がもう付いて行けないって悲鳴を上げてるような気がする。

どうしたら良いのか分からなくって、先輩のニットの胸元をグって握ると

先輩の唇が離れた。

今までで一番近くで見る先輩の顔は、初めて見る顔で

大人っぽくて、少しだけ怖くなったけど、それはすぐに「カッコイイ...」って好きに染まる。

「...さっき...」
「え...？」

先輩がちょっと気まずそうに、口を開いた。

「さっき、もう無理って思って...」
「...無理...？」
「俺、このままじゃチューしちゃうって思って、それで部屋出ようと思ったの」
「えっ...あっ...！」
「だってAちゃん、ちょー可愛い顔したから...あんなの反則だよ」

『そんな顔されたら』って言われたのを思い出して、顔が熱くなる。

「もしかして俺の勢いに負けて付き合っちゃったのかなー、とか思ってた」
「...え...？」
「そうじゃなかったんだよね？」
「...はい...」
「好き？」

黒目がちな目が、大好きで

その目にこんな風に見られたら、好きにならない人なんて居ないんじゃないかな？なんて思うんだ。

「ねぇ、好き？」

キュっと半月型になった先輩の目

意地悪に訊いて来る、鼻に掛かった声、全部全部

「...好き...」

もう、黙ってるのが辛い位に好き。

覚えたてのキスは、レモン味なんかじゃなくって

ほんの少しの苺とチョコの味。

身体の真ん中から、カァって熱くなって

私の全部溶けちゃいそうで、唇が重なる度に「好き」が大きくなる。

いつだってこれ以上は無いんじゃないかな？って思ってるのに、私の先輩への「好き」って気持ちはどんどんどんどん大きくなる。

・

家まで送ってくれた先輩に帰り際、「先輩は我慢...してくれてたんですか？」って訊いてみた。

「我慢ー...してた！でも、好きって言われるまでは！って耐えた！」
「...ごめんなさい」
「何で謝るの？俺、今日めっちゃ嬉しかったんだから」
「先輩...」
「我慢したから、こんだけ嬉しいんだもん」

もう雰囲気で分かる。

キス、される。

そう思って、目を閉じるとふわりと触れる優しい唇。

「大好き...Aちゃん」
「...うん...」
「フフッ、だーい好き」
「...うん、フフッ」
「......ホントだよ、好き...」

掠れた声に、胸が潰れそう。