コイカゼ・ダイブ 6th【ars M.A】 (ページ23)

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198.スキ・コノンデ。ページ23

私の様子を窺うように、先生が顔を覗き込んで来る。

「相葉のコト、怖くなった？」
「...怖くは...無いです。全然怖くない」

そっか、と先生は笑う。

ヒーローみたいに見てたけど『先輩は男子なんだ』、ってのは前からちょっとづつ感じてた。

もしかすると、他の人ならそれを怖いって思ったのかもしれない。
だけど、先輩なら怖いって思わない。

女の子との色んなコト、それを漂わせる雰囲気だってちょっと格好良いなんて思ってたんだから。

まぁ今はちょっと、ヤキモチみたいなのもあるけど...。

「で、相葉は我慢してんのか...って件だけど」
「あ、はい！」

そこ！

一番知りたいトコ！

「してるよ、きっと」

先生は、普通に言った。

『明日は火曜日だよ』くらい、普通に言った。

「...え？」
「我慢、してるだろ」
「...我慢...させちゃってる...？」
「んー...、それはちょっとニュアンス違うかな。アイツは好き好んで我慢してるんだと思うけど？」

好き好んで我慢？

我慢を好き好んでする状況なんて、あるの？

「大坂とゆっくり時間を重ねたいだけなんじゃない？」
「...私と...ゆっくり...？」
「一気に進む事は簡単にできるよ？でも、それじゃあ勿体ないって思ってんのかもしんない。ほら、旨いモン食べ終わる時にさ『あぁ、無くなっちゃう』って寂しくなったりしない？」
「します...けど」
「ゆっくり味わいたい的な、その感じ？......あ、何か違うな。これ、オレの個人的な思想だわ。フハハッ！忘れて！」

先生は舌をチロっと出して、「ヤバッ」って顔で私から顔を背ける。

ウウン、って咳払いをしてちょっと苦笑いした先生がまたこっちを見た。

「相葉は、それだけ大坂を大切に想ってるってコトでしょ」
「えっ！？...そんな事は...」
「ビビらせたくないんだよ。大坂に、嫌われたくないんだよ」
「私...嫌ったりしないのに...」
「そんなの、相葉には分かんないコトだろ？大坂のホントの気持ちなんて、大坂にしか分かんねぇんだもん」

私はこんなに相葉先輩が好きなのに

先輩には伝わってない？

私が先輩を嫌うかもしれないなんて、思ってたりするの？

「大坂、お前さぁ」
「はい...」
「ちゃんと言ってやった？相葉に」
「...え？」

先生の茶色い目が、ジっと私の目の中を覗く。

「相葉のコト、好きだって。ちゃんと言ってやってる？」

その言葉に、私はスカートをギュっと握った。