コイカゼ・ダイブ 6th【ars M.A】 (ページ3)

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178.ワルイコト・ナノニ。ページ3

大野先生はさすがに白衣じゃなくて、あったかそうなダウンを着ていて

「あけましておめでとぉ、櫻井くん」

櫻井先輩に手を振り返した。

「おはようございます」
「大坂さんも、おはよ。数学の課題、ちゃんとやった？」
「...やりっ...ました...」

本当はまだ全部終わってなくて、トモちゃんに写させて貰おうと思ってた私は思わず俯く。

そんな私を見て、櫻井先輩がブハッて吹き出した。

昇降口で別れる時「雅紀、始業式には間に合うんじゃないかな」って言って

先輩は、三年生の教室がある校舎へ歩いてった。

教室では、トモちゃんが私を待ち構えてたように走り寄って来て思いっきり抱きつかれた。

「Aーっ！」
「トモちゃーん！！」
「良かったねぇ！ホント良かったねぇ！！」

冬休み中は会えなかったトモちゃんに、LINEで伝えた相葉先輩とのコト。

すぐに電話が掛かってきて、その時にいっぱい話したんだけど
トモちゃんはまだまだ訊きたい事がある！って、朝から興奮状態で

「アハハッ！トモちゃん、鼻息荒いよ」
「荒くもなるでしょー！」

私達は、手を取り合ってひたすら笑ってた。

「相葉先輩って、彼女にはどんな感じなの？」
「どんな...優しい、かな」
「優しいのはこれまでも優しかったじゃーん！他に他に！」
「えー...他ー？」

トモちゃんとそんな会話をしながら、始業式が行われる体育館に移動する。

続々と集まって来る生徒の中に、探してしまう先輩の姿。

けどすぐに見付けられたのはさっきまで一緒に居た櫻井先輩で、その隣に相葉先輩の姿が無い。

若林先輩も見付けたけど、周りには女の子ばっかり。

そのまま始業式は始まってしまって、いつもよのうに校長先生の長い話が続く。

大野先生は、白衣になってて
相変わらず二宮先生は眠そうにあくびをしてる。

それを眺めてると、ふわぁ、と大きく口を開いてた二宮先生の眉間に皺が寄った。

その視線が体育館の後ろの方に向いていて

あの日を思い出して、私の胸はドクンと波打つ。

振り返ると、あの日と同じように

初めて彼を見た、あの日と同じように

相葉先輩が、腰を屈めてコソーッと体育館に入って来てた。

茶色い髪が、ふわりと靡く。

「おいこら！相葉ーっ！」
「はいっ！！」

マイクも使わず叫んだ二宮先生の大声に、ピーンと背筋を伸ばした相葉先輩が

悪い事してるはずなのにクシャッと笑った。

先輩は悪い事してるはずなのに、私はやっぱりキュンとする。