コイカゼ・ダイブ 6th【ars M.A】 (ページ19)

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194.トクベツナ・バショ。ページ19

映画とかドラマとかでキスをした時に「チュッ」って音がするのは演出で、後からそーゆー音を付けてるんだと思ってた。

だけど、今先輩の唇が頬に触れた時

小さくそこから「チュッ」って音がして

本当にこんな音がするんだ...って初めて知ったら、もっとドキドキして来て

先輩を見る事も、出来なくなる。

「...えっと...Aちゃん、次何見たい！？」
「えっ...あ...」
「俺、シロクマ見たい！」

シロクマ、どっち居るんだろ...って先輩が私が左手にずっと持ってたマップを取って広げた。

「あ、ちょっと戻らなきゃダメなのか。順路、関係無くなっちゃった」

ちょっと笑った先輩が、私の手を引く。

私よりずっと背の高い相葉先輩の後姿を眺めながら、歩く。

「...Aちゃん」
「は...い」

先輩が振り返らずに、歩きながら話し掛けて来る。

「めっちゃドキドキしちゃってる。俺」
「えっ...！？」
「...あ！Aちゃん、シロクマ居たよ！」

クルっと振り返った先輩は、私の大好きな笑顔で

こんな格好良い男の子にさっきほっぺにチューされたんだって思ったら、胸がキュウってなった。

動物園を出て、スタバでお茶をしてうちの夕飯の時間が来る前に先輩がうちまで送ってくれた。

一日があっとゆー間過ぎて、もっともっと一緒に居たいのに...

本当はお母さんも「夕飯も彼と食べて来て良いよ」って言ってくれてたのに、何だか恥ずかしくて先輩にそれを言い出せないまま家の前に着いてしまう。

「楽しかったね！...って、俺は楽しかったんだけど...」
「あ...私も楽しかったです！」
「ホント？良かった」
「はい...すっごく、楽しかったです」

ニコっと笑って頷いた相葉先輩の手を、もう離さなきゃいけないのに離せない。

「じゃ、また学校でね」
「...はい」

私が離さなきゃ、先輩帰れないのに...

先輩の顔とは全然違うトコを見てるくせに、その手をギュウっと握っちゃってる私の顔を覗き込むようにした先輩が、困ったように微笑む。

「Aちゃんのお母さんに見付かったら、怒られちゃうかな」
「...え？」

何で怒られるの？と思って先輩の顔を見た瞬間に、手を引っ張られて胸の中に抱き締められる。

フワっと香った先輩の匂いを胸いっぱいに吸い込みたいのに、上手く息も出来ない。

苦しい私の前髪を、先輩の手がソッと撫で上げて

全開になったオデコに、優しくキスされた。

私の頬とオデコ、昨日までと全然違う。

特別な場所になった。