コイカゼ・ダイブ 6th【ars M.A】 (ページ2)

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177.ツツ・ヌケ。ページ2

一度噎せた喉から、ゲホンゲホンと咳が止まらない。

「アハハッ！大丈夫？」
「ゲホッ...あい...だいじょ...ゲホッ」
「動揺がハンパ無いんですけど！大坂さんって隠し事できないタイプだね」

大笑いしてる櫻井先輩が、背中をポンポンと軽く叩いてくれる。

「...櫻井先輩...あの...」
「俺と雅紀は、大坂さんが思ってる以上に全部筒抜けなの」
「つつっ...！？ぬけ...」
「そ。筒抜け。雅紀も隠し事出来ないし。ってゆーか、アイツこーゆーの黙ってんの我慢できないタイプだもん」

そりゃそうだよ。仲良しだもん。

そりゃそうだよ。相葉先輩、櫻井先輩に告白する場所相談してたんだもん。

そりゃそうだよ。櫻井先輩は知ってるに決まってる。

それに気付いた瞬間、一気に恥ずかしくなった。

「良かったね、おめでと」

櫻井先輩をチラッと見ると、ミントの香りがもうこれ以上似合う人は居ない！って位に爽やかに微笑んでて

思わず、私もヘラッと笑った。

「はい...あの...お陰様で...」
「お陰様って！何だそれー、年寄り臭いな！」
「もしかして先輩はずっと前から...あの...その、えっとー...」
「ん？」

訊きたいけど、訊けない。

何か...自惚れみたいに聞こえちゃいそうで、言えない。

「あ、もしかして雅紀が大坂さんを好きなの前から知ってたの？的な？」
「えっ！？あ...え...はい...」
「アハハ！そりゃ知ってるよー。雅紀、すぐ言って来たもん。『翔ちゃん、どうしよう！俺、Aちゃんが好きだ！』っつって」

えぇーっ！？って、大声が出そうになったのを必死で堪えた。

「そしたら、どうも大坂さんも雅紀の事好きっぽいしさ。あれあれ？みたいな」
「...あ...」
「あ、これ両想いじゃんって思ってさ。だからちょっと、お節介もしちゃった」

私の手から単語帳を取って、櫻井先輩がクスクス笑う。

「雅紀が告白できて良かった」

その横顔が、優しく綻ぶ。

口元をマフラーでまた隠した先輩が、「寒っ...」って篭った声を出した。

「ってゆーか俺、雅紀に安産のお守り貰ったんだけど」
「あ、買ってました！」
「マジでビビったかんね！俺、何も産まねぇよ！って。けど理由聞いて雅紀らしいわと思った」

学校が見えて来た。

先輩の赤いスニーカーがポコポコ鳴る。

「雅紀のそんなトコも好きなんでしょ？」
「へっ！？」
「あ、おーちゃん！あけおめ！」

ケラケラ笑う櫻井先輩が、校門で立って挨拶してる大野先生に手を振った。